検索
ニュース

4Kテレビは花開くか、業界からは「3Dとは違う」と期待の声もディスプレイ技術 オピニオン(2/2 ページ)

普及の兆しがいまだにあまり見えない家庭用の3Dテレビに比べて、4Kテレビ市場の成長については楽観的にみる業界関係者が多いようだ。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

4Kテレビの展望は?

 Doherty氏は、「超高精細テレビは3Dテレビとは違う」と確信している。同氏は、「そう考えるには、多くの根拠がある。超高精細テレビは“その場にいるような”臨場感が味わえる。35mmフィルムで観ていた映画やライブ/スポーツ映像が70mmフィルムで上映されるような鮮やかな映像を体験できる。こんな体験が、誰にでもできるようになる」と説明している。

同氏は、「超高精細ディスプレイは、47/60/85インチテレビが主流になるのか、パナソニックが『2013 International CES』で披露したような20インチ前後の4Kタブレットや、複数の4Kディスプレイへの出力をサポートするAppleの新型「MacPro」などが人気を呼ぶのか、それは未知数だ。だが、超高精細ディスプレイの波は確かにやって来ている」と付け加えた。

 一方、NPD GroupのArnold氏とIHS iSuppliのDash氏は、「超高精細テレビは3Dテレビとは違う」と考える最大の理由の1つとして、3Dメガネを装着する必要がないことを挙げている。

 では、超高精細テレビに対応したコンテンツは十分に提供されるのだろうか?

 Dash氏は、この点については「ほぼ問題ない」と述べ、「多くのテレビメーカーが、既存の映像の解像度を上げたり、独自のコンテンツを作成したりするなど、超高精細に対応するコンテンツの提供に向けた準備を積極的に進めている。日本では、2014年に4Kの試験放送が開始される。4Kビデオカメラもいくつか発表されていて、消費者が4Kの映像を自分で撮影することも可能になりつつある。4K映画の導入を検討するメーカー*1)も出始めた」と説明する。

*1)ソニーは、4Kテレビの購入者を対象に、インターネットで4K映画を配信するサービスを米国で開始する予定だという。開始時期は、2013年夏を見込んでいる。

 だが、このように技術が進歩していることで、一部の民生機器業界は、いささか大きすぎる期待を抱いているようにも感じられる。4K対応のスポーツ番組など、幅広いコンテンツがいつ頃から放送されるのかは、依然として明らかになっていない。

 最近の報道によれば、ESPNのCTO(最高経営責任者)であるChuck Pagano氏は、「4Kの展望が明るいかどうかを見極めるには、今はまだ時期尚早だ。現在のところ、中立的な見方をしている」と述べたという。同氏は、Multichannel Newsのインタビューの中で、「4Kテレビの映像と1080pのHD映像との違いを消費者が見分けられるかどうか、確信がない。当社は以前、55インチの画面上に両方の映像を並べて検証したことがあるが、違いがほとんど分からず頭を抱えてしまった」と話している。

 米国のケーブルテレビ局HBOの前CTO(最高技術責任者)で、現在は引退しているBob Zitter氏も、2013年初頭に行われたインタビューで、「消費者が4Kテレビの購入に積極的かどうかについては、極めて疑わしい。4Kという高画質の恩恵を受けるには、60インチ以上のテレビが必要だ。だが、部屋のスペースの問題で、そのような超大型テレビの設置が難しい家庭も多いだろう。HBOなどの放送局も、4Kテレビを保有する視聴者の数が少なければ、4K対応のコンテンツの製作や放送には消極的にならざるを得ない」と述べている。


「CEATEC JAPAN 2012」で展示された、ソニーの84V型の4Kテレビ(クリックで拡大)

 NPD GroupのArnold氏によると、米国におけるHDテレビの売上高は、2005〜2007年に最初のピークを迎えた。テレビの買い替えサイクルが平均で7〜10年であることを考えると、4Kテレビは、ちょうどこの買い替えのタイミングに当たるので、それが売り上げを後押しするかもしれない。

 4Kテレビの真の性能を楽しむには、超大型ディスプレイが必要だ。4Kに対応したコンテンツの製作/提供もなかなか進んでいない上に、コンテンツの価格は高い。だが、買い替えのタイミングやコンテンツの提供のタイミングがうまくいけば、4Kテレビは大当たりを引く可能性を秘めている。

【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る