ルネサス モバイルのモデム事業が挫折した5つの理由:ビジネスニュース オピニオン(2/2 ページ)
ルネサス モバイルのLTEモデム事業は、なぜうまくいかなかったのか――。同社の戦略や企業体質や、携帯電話機市場の変化の激しさを考慮すると、撤退は避けられなかったのかもしれない。
4つ目は、このような膨大な数のエンジニアを抱えることにより、企業のリソースが枯渇する可能性があるという点だ。大きなデザインウィンを獲得できない限り、リソースを維持していくことは不可能になる。
ST-Ericssonとルネサス モバイルは、数カ月にわたり売却先を探していたが、最終的に買い手は見つからなかった。両社は結局、Texas Instruments(TI)やFreescale Semiconductor、Analog Devicesなどが数年前に、モデム事業から撤退した時と同じ道をたどっていることになる。ただし、Analog Devicesは唯一、同社のモデム事業部門をMediaTekに売却していることから、例外だといえる(関連記事:“中国=設計者”の新たな図式から見える、半導体業界の2つのキーワード)。
最後に、5つ目の要因は、ルネサスとST-Ericssonが両社とも企業合併による悪夢に苦しんだという点だ。
米国の市場調査会社であるStrategy Analyticsでアナリストを務めるSravan Kundojjala氏は2013年3月に、「ST-Ericssonは、レガシー製品の重複や、新製品ロードマップへの移行、度重なる経営陣の交代などといった課題に苦悩していた。同社は当時、複数の企業を統合して、当初の事業計画を遂行することしか頭になかった」とコメントしている。また、ルネサスも同様に、NECの半導体事業部門との統合によって肥大化していた。そこで、100%子会社であるルネサス モバイルを設立し、フィンランドのエンジニア1100名以上を移管させたのである。
ルネサスは、グローバル化への対応策の一環として、半導体チップの価格決定や製品ロードマップの開発、LTEモデムなどに関する意思決定機能を、ルネサス モバイルのパリ拠点に移行した。意思決定において日本本社の慎重さを反映させないための対処だったにもかかわらず、大胆な戦略が期待されたパリ拠点においても、グローバルチームの管理は困難を極めるものだったという。
ルネサス モバイルの今後は不透明
ルネサスは、LTEモデム関連の開発活動や販売拡大を停止することを発表したが、ルネサス モバイルが開発したIP(Intellectual Property)の所有権については不明だ。また、これらのIPが他のメーカーにライセンス供与されるのかどうかも明らかになっていない。
さらに、ルネサス モバイルのフィンランドとインド、中国における事業停止に伴い、ルネサス モバイル自体も清算することになるのかどうかも不明だ。ルネサス モバイルの経営幹部は、EE Timesの問い合わせに対し、コメントを控えている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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