60GHz帯無線市場を狙う新興企業:ビジネスニュース 企業動向
2013年内にも無線通信仕様「WiGig」の認証プログラムの開始が見込まれるなど市場拡大が期待される60GHz帯無線。この60GHz帯無線用チップ市場に商機を見いだし、新規参入を図る新興企業も増えている。英国のBlu Wireless Technologyもその1社で、このほど今後の事業展開に向けた資金調達を終え、60GHz帯無線ベースバンドチップ用IPで攻勢をかけるという。
高性能のプログラマブル・ベースバンド技術の開発を手掛けるBlu Wireless Technologyはこのほど、200万ユーロ(約2億6000万円)の資金調達を完了した。この資金を用いて人員を約30名に倍増するほか、60GHz帯のベースバンド・エンジン「Hydra 60」のIPライセンスの事業モデルを推進する。同社は、IEEE802.11adを用いた次世代Wi-Fi分野とともに、4Gネットワーク向けのバックホール通信分野に関心を寄せている。
Blu Wirelessは、2009年設立の英国のベンチャー企業だ。同社CEOを務めるHenry Nurser氏は、EE Timesが電話で行ったインタビューの中で、「2012年にビジネスモデルをファブレスメーカーからIPライセンサーに変換する決定を下した」と事業方針を説明している。また、Nurser氏は、「当社の強みは、並行処理を用いたギガビットWi-Fiデータ転送向け変調/復調アルゴリズムにある。シングルキャリア、マルチキャリアに関わらずOFDMベースの通信プロトコルであれば、低消費電力と小さい回路規模という2つの利点を提供できる」という。同社のプレスリリースによると、このアルゴリズムは、データ転送速度が20Gbit/秒以上の将来無線規格にも適用できるとしている。
「ギガビットWi-Fiでも市場参入を巡る戦いが勃発する」
Nurser氏は、「10年前の2.4GHzを使ったWi-Fiが登場してきた時と同様に、ギガビットWi-Fiでも市場参入を巡る戦いが勃発する」と予測している。同氏は、「当社は、ギガビットWi-Fi市場に参入できる好位置にある。当社のアーキテクチャとマイクロ・アーキテクチャは堅牢だ。今後数カ月間でプロトタイプのIPを出荷する計画である他、2014年初めにギガビットWi-Fi関連の技術を発表する予定だ」と述べた。
Blu Wirelessの市場へ向けた動きは、2つの業界団体の合併によって後押しされている。2013年初め、Wireless Gigabit(WiGig)AllianceとWi-Fi Allianceが、それぞれの活動をWi-Fi Allianceに統合する計画の概要をまとめた(関連記事:60GHz帯通信の勢力図、Wi-Fi AllianceとWiGigの合併でどう変わる?)。技術開発活動とWiGigの資産のWi-Fi Allianceへの移管は、2013年半ばまでに完了する予定だ。また、Wi-Fi Allianceが初めて手掛けるWiGig製品の相互運用認証プログラムは、2013年中に立ち上げられる見込みだ(関連記事:「802.11ac」の認定プログラムは6月リリース、Wi-Fi Allianceが都内で会見)。
Nurser氏は、「WiGig製品は、各企業が開発と実証に2年を費やした後、2015年に市場に投入される見込みだ。4G向けバックホール分野については、小型基地局の構想が動き始めており需要は既にある。認可取得の必要がない60GHz帯無線は最良のソリューションだ」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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