サーバ用CPU市場に挑むAMDとARMの思惑――ゲーム機の成功モデルをサーバでも:組み込み技術(2/2 ページ)
AMDは、ARMの64ビットコアを採用したサーバ向けCPU「Seattle(開発コードネーム)」を、2014年第2四半期にサンプル出荷することを明らかにした。AMDは、ARMサーバ市場でシェアを伸ばすために、同社がゲーム機市場で成功したときのモデルを持ち込もうとしている。すなわち、カスタムSoCの開発だ。Seattleを汎用品として市場に投入したあとは、そうしたカスタムSoCの開発を進める予定としている。
カスタムのSoCが鍵に
ARMサーバ向けSoC CPUの市場で、AMDは、同社のゲームコンソール市場における成功モデルを持ち込もうとしている。AMDでサーバビジネスを統括するAndrew Feldman副社長は、「ARM 64ビットサーバ市場がすぐに立ち上がるとは考えていない。われわれとしては2015年に1桁、2016年に2桁のシェアを実現すべく、長期的なプランを立てている」と説明する。そこで鍵を握るのが、同社のカスタムチップ戦略だ。
AMDはこれまで、任天堂やMicrosoft、ソニーに対してゲーム機用カスタムチップを提供してきた。その経験が、今後のデータセンター向けサーバSoCでも生きてくるとFeldman氏は見ている。同氏は「現在、データセンターでは、Facebookなどが推し進めるオープンソースのサーバにネットワークアクセラレータなどのハードウェアを実装することで、省電力性と高性能化を両立させている。また、省電力性とパフォーマンスを両立させるべく、1つのサーバで1つのソフトウェアを効率よく動かすシステムを構築し、用途の異なる複数のシステムを組み合わせる方式がトレンドになっている」と指摘する。
こうしたトレンドを追究していった場合「データセンター向けにカスタムのSoCを作ることで、より電力効率に優れたサーバを構築できるはず」(同氏)とし、大口顧客に対しては、テイラーメイドのカスタムSoCを提供することで現在FPGAチップなどをアクセラレータに利用しているサーバを置き換え、省電力性とコストの両面でメリットをもたらすことができると考えているようだ。
ARMでサーバシステムのエコシステム構築を統括するLakshmi Mandyam氏も「ARMの強みは、省電力性に優れたCPUコアだけではない。そのCPUコアをパートナーのIPコアに統合できるインターコネクト仕様『AMBA(Advanced Microcontroller Bus Architecture)』を提供していて、容易に独自のSoCが開発できるのが強みだ」とアピール。ARMとしては、この強みを64ビット環境でも構築すべくAMDとのパートナーシップを結んだと説明。両社の協業の第1弾となるSeattleでは、AMDがサーバ市場で培ってきた技術をSoCに統合することで、ARMサーバ市場の拡大を図りたい意向だ。
Feldman氏は、Seattleで統合するAMDのIPとして、
- 最大128GBのメモリ容量を実現するDDR3/DDR4メモリインタフェース
- 2つの10GBASE-KR(10ギガビットイーサネット)コントローラ
- 40レーンのPCI Express 3.0インタフェース
- CPUノード間やCPU-ストレージ間などを高速に接続するAMDの独自インターコネクト技術「Freedom Fabric」
を挙げる。
まずはARM Cortex-A57を8コア統合した2GHz動作のSeattleを来年第1四半期にサンプル出荷する計画で、16コア製品については2014年後半のサンプリングになるという見通しを明らかにした。同社はSeattleを汎用製品として市場展開し、2015年以降に、カスタムSoCの受注を獲得したい考えだ。Feldman氏は、将来的に2ソケットのARM SoCソリューションや仮想化向けSoCも計画中であることを明らかにしている。
上述したように、Feldman氏は、AMDのARMサーバSoCビジネスをかなり長期的な視野で捉えている。同氏は「2014年は、ARMサーバの普及はまだ見込めないが、2015年からはメジャープレイヤーがARMを採用し始めるだろう」とみている。Feldman氏は「高密度サーバ市場では、最終的にARMが40%くらいのシェアを握ることになるだろう」とし、「その鍵を握るのは、消費電力でもコストでもない。サーバの用途にあわせたカスタムSoCの存在だ」と、同社のテイラーメイドSoC戦略をアピールした。
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