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インタビュー

「本質に基づいてモノを作る」――日産GT-Rの開発者が語る、モノづくりにおけるシステム計測の役割NIDays 2013(4/4 ページ)

2007年に発売されて以来、世界中で圧倒的な人気を誇る日産自動車のスポーツカー「GT-R」。開発チームを指揮した水野和敏氏は、GT-Rについて「物事の本質に立ち戻り、それに基づいて開発しただけ」と言い切る。そして、物事の本質を“翻訳”してくれたのが、システム計測で取得したデータの数々だった。水野氏と、計測プラットフォームを提供する日本ナショナルインスツルメンツの池田亮太氏が、システム計測がモノづくりにもたらすメリットについて語った。

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水野氏 感性に訴えたモノづくりをするなら、日本人は絶対に強いですよ。なぜかっていうと日本語が“感性用語”だから。英語が世界共通語と見なされているのは、あれは感性が必要ない言葉だからです。記号と同じ。だからどんな人にでも通じやすい。でも日本語には、わびさびとか、感性に訴えるような語彙(ごい)がたくさんありますね。そういう文化の中で育ってきた日本人の感性がシステム計測まで入り込むことができれば、日本は世界をしのげるモノづくりができるはずなんです。

 計測器は、最終的に人間の感性との勝負になってくる。いかに人間のレスポンスを反映するか。そこだと思うんです。

 エアコンなんかにも人間のレスポンスを反映させるべきです。例えばリモコンのスイッチを入れて、“ピッ”とか“カチッ”という音がした方が人間は安心する。「反応してる」というのが分かるからです。だから、エアコンを操作するためのスマートフォン用アプリを作るなら、“カチッ”という音がスマートフォンから出るような、そんな仕組みにした方がいい。これも、人間の本質を見極めて設計するということです。

池田氏 そこを無視してしまうと、“性能がよいだけ”になってしまって、本当に人々が求めているものは作れないということですね。

 今、自動車の世界では、自動走行車の研究開発がさかんですね。ある開発者の方がおっしゃっていたんですが、自動走行では、人間の意志とクルマとの“駆け引き”の部分をどうするのかというのが、一番の問題なんだそうです。人間の感性に当たるレスポンスの部分とマシンのバランスをいつも探っていると。私は脳外科の先生ともよく話をするんですが、医療の世界でも同じ流れなのかもしれません。例えば、脳波を利用したアプリケーションも研究されていますが、脳波だけでなく、目の動きやジェスチャーといったレスポンスの情報を組み合わせることで、よりよいモノが生まれるのではないでしょうか。

水野氏 そうですね。ユーザーのレスポンスという情報が加わるようになってきてるから、これからモノづくりの世界はどんどん面白くなるでしょうね。

池田氏 人間のレスポンス抜きには、モノを作れない時代に突入しているんだと思います。もう1つ、これからの世界を表わす言葉に「モノのインターネット」がありますね。身の回りのモノ全てが独自の知能を持ち、お互いに通信し合って何らかの制御を行う。こういう時代になりつつあります。

 このような仕組みを構築するには、ゼロから始めるよりも、プラットフォームを用いることが一番の近道になるかと思います。基礎となるプラットフォームさえあれば、シンプルなシステムはもちろん、より複雑なシステムを構築する場合の効率も上がることは間違いありません。

水野氏 ナショナルインスツルメンツは、計測用のプラットフォームを生み出したことで、計測システムを飛躍的に進歩させました。あとはユーザーがその進歩に追い付けばいい。“人間の本質とは何なのか”を考え直せば、データの見え方も違ってくる。システム計測が進化すればするほど、使い手は人間の本質という原点に立ち戻る必要があるんです。



計測システムの使い手側である水野氏(左)と、提供側である池田氏。池田氏は、モノづくりを支えるべく、「計測プラットフォームをさせるために今後も投資を続けていく」と強調した
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