IoT対応デバイス、やがては指先に装着する時代へ:ビジネスニュース
あらゆる機器が無線でつながるモノのインターネット(IoT)。米大学の教授らは、IoT対応機器を、いずれは指先に乗るくらいのサイズに小型化することを目指している。
「今や、メガネにディスプレイが搭載され、コンピュータをポケットに入れて持ち運べるような時代になった。いずれは、加速度センサーを指先に装着できるようになるだろう。そうなれば、いつでも好きな時にキーボードやマウスを操作したり、エアギターを弾いたりすることが可能になる」――。
米カリフォルニア大学バークレー校の教授であるKris Pister氏が、カリフォルニア州サンタクララで開催されたイベント「IDTech」(2013年11月20〜21日)において、同氏が目指す世界について聴衆に語った。シリコンバレーのカフェで耳にするような、単なる壮大な夢を語っているわけではない。同氏は、モノのインターネット(IoT:Internet of Things)開発を先駆的に手掛けてきた人物である。現在は、指先に装着可能なIoTのノードの実現に向けて取り組んでいる。
Pister氏が思い描くIoTノードとは、真のSoC(System on Chip)である。マイコンや無線通信機能だけでなく、センサーやアンテナ、水晶発振器、太陽光発電源なども搭載するという。同氏はIDTechの会場において、「光にかざすだけで、周辺機器と接続することが可能になる」と語っている。また、熱エネルギー源や運動エネルギー源、高周波(RF)源など、さまざまな種類の環境発電を利用できるようになる可能性も秘めている。さらに、短距離の無線通信で事足りるならば、60GHz帯を利用できるかもしれないという。
Pister氏によれば、こうした技術を実現するには、今後さらに3〜5年を要する見込みだという。MEMS技術を発展させることも必要だ。例えば、新技術の開発によって、水晶発振器に代えてリファレンス時間や周波数などをインターネット経由で取り入れたり、シリコンチップのさらなる小型化を実現することなどが挙げられる。
これまで、工業オートメーション分野でIoTの導入を主導してきたのは、石油産業とガス産業だ。Pister氏は、新興企業Dust Networksを設立して、同分野におけるIoT導入に携わってきた。なお同社は、2011年12月にLinear Technologyに買収されている。かつては、その輝かしい将来を予測する声が多かったが、現状はそれとは程遠い状況にある。ある市場専門家は以前、「IoTノードの数は、2007年までに携帯電話機の数を上回り、その市場規模は81億米ドルに達する」との予測を発表していた。Pister氏は、「このような予測は全くの的外れだった。実際には、予測された数値をはるかに下回る結果となっている」と述べる。
成長を低迷させた要因としては、いくつかの問題が挙げられる。例えば、高信頼性かつ低コストの、標準規格に対応した製品を提供できるベンダーの数が不十分だった。
だが明るい兆しもある。Pister氏は、IoTノード向けに、幅広く普及しているインターネットプロトコルをベースにした標準規格の策定を、複数の技術者とともに進めているのだ。これは、メッシュネットワークと時間同期を利用するIEEE 802.14.4eに基づくものだという。さらに、IETF(Internet Engineering Task Force)のIPv6にも注目が集まっている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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