「M2M」「IoT」を実現する無線技術が競演:ワイヤレスジャパン 2013
さまざまな無線関連技術が展示されたワイヤレスジャパン2013(2013年5月29〜31日、東京ビッグサイト)。機器が通信によりインターネットと連携する「M2M」(Machine to Machine)、「IoT」(モノのインターネット)を実現する無線通信モジュールが数多く展示された。
あらゆるモノをネットワークで接続する「M2M」(Machine to Machine)、「IoT」(Internet of Things)は今後、大きな市場を形成すると期待を集めている。家電や産業機器などの遠隔監視制御をはじめ、スマートメーターなどに代表されるエネルギー分野、セキュリティ分野、医療分野など数え切れない応用が検討されている(関連記事:IoTの潜在市場は無限大、今後の半導体業界のけん引役に)。
M2M、IoTを実現する上で、避けられないのがあらゆるモノに通信機能を組み込むことだ。組み込む通信機能としては、有線通信も選択されるケースもあるが、設置自由度、移動性などの観点から無線通信が主流だ。そうした中で「サブギガヘルツ/920MHz帯」「IEEE802.15.4g」「Wi-SUN」「ZigBee IP」など、M2M/IoT用無線のための新しい無線周波数帯、標準規格/仕様が次々に登場し、それらに対応した無線モジュールなどの製品、技術が開発されている。
注目のサブギガヘルツ/920MHz帯無線
サブギガヘルツ帯無線は、無線LANやBluetoothなど身近な無線の多くが使用する2.4GHz帯よりも低い1GHz以下の周波数を使用する無線のことを指す。2.4GHz無線に比べ、通信速度は遅くなるが、通信距離は長くなる利点があり、あまり大きくないデータ量を扱うM2M、IoT分野でより容易にネットワークを構築できる無線として注目を集める。特に日本国内では、2012年7月に920MHz帯無線が本格開放されたこともあり、サブギガヘルツ帯無線関連製品、技術の開発が活発に行われている。
サブギガヘルツ帯無線での通信規格としては、「IEEE802.15.4g」が規格化されている。同規格は、通信の基本的な部分に当たる物理層の仕様を定めたものだが、さまざまな通信プロトコルなどの上位層を実装できる規格となっている。他の無線規格では、ある程度限られた上位層を実装することを前提に仕様を固めた規格が多いが、各国で周波数帯が微妙に異なり、多種多様な用途での応用が見込まれるサブギガヘルツ帯無線の特異性を鑑み、あえて、規格で上位層を絞り込んでいない。
ただ、さまざまな周波数、複数の通信方式が選べるといった高い自由度がある反面、無線モジュールや無線機器メーカーそれぞれが、異なる通信プロトコルなどの上位層を開発すれば、異メーカー間での相互接続性が確保されないという課題がある。そこで、複数のメーカーが連携し、用途などに応じた「通信仕様」をまとめ、相互接続を実現しようとする動きがある。
Wi-SUNとZigBee IP
その1つの業界団体が「Wi-SUNアライアンス」であり、ワイヤレスジャパン2013でも、Wi-SUNアライアンスブースを出展し、メンバー企業の製品、技術の紹介を行った。同アライアンスの創設メンバーである情報通信研究機構(以下、NICT)は、Wi-SUN仕様上に、HEMSアプリケーション通信規格「ECHONET Lite」を実装し、Wi-SUNとECHONET Liteの両仕様/規格に準拠した無線機を展示した。同時に、同アライアンスメンバーの村田製作所、ACCESS、エディックシステムズ(EDIC)と共同で、Wi-SUN/ECHONET Lite対応のスマートハウス用のワイヤレスモデムゲートウェイと、Wi-SUN準拠の920MHz帯無線通信モジュールを使った温湿度センサーによるワイヤレスセンサーシステムのデモを行った。Wi-SUN準拠の920MHz帯無線通信モジュールは村田製作所とEDICの2社がそれぞれ開発したものを使用し、異なるメーカーが製造したモジュール間でも通信が行える相互接続性をアピールした。
ZigBeeアライアンスの国内メンバーを中心に構成する「ZigBee SIGジャパン」もワイヤレスジャパンに出展した。2.4GHz帯無線のイメージが強いZigBeeだが、ZigBeeアライアンスでは920MHz帯無線版ZigBeeといえる通信仕様「ZigBee IP」の策定を進めている。ZigBee SIGジャパンブースでもZigBee IPとECHONET Liteを実装したHEMSコントローラや、アダプタ間の相互接続デモを行った。
各社もサブギガヘルツ無線対応製品を展示
業界団体だけでなく、各企業レベルでのM2M、IoT向け無線製品、技術のアピールも活発に行われた。
ZigBee SIGジャパンブースに出展したOKIは、2013年10月の出荷を予定する、920MHz帯無線通信モジュールを紹介した。同モジュールは、無線マルチホップに対応し、暗号化や認証のセキュリティ機能を標準で搭載する他、省電力設計により「電池駆動で10年以上使用できる」(同社)という。
佐鳥電機は、2012年に発売したIEEE802.15.4g/e規格準拠の通信制御ソフトを実装した無線モジュールのデモ展示を行った。同社は、同無線モジュール用6LowPAN対応ソフトウェアを2013年7月からサンプル提供する予定。ブースでは、6LowPAN対応モジュールを応用したECHONET Lite評価環境(開発中)の試作デモも実施した。
ディジ インターナショナルは、海外で実績のあるサブギガヘルツ帯無線モジュールを出品した。欧州向けのサブギガヘルツ帯無線モジュール「XBee 868LP」は、日本の920MHz帯にも対応可能なハードウェア構成となっていて、現在、日本向けのソフトウェアの開発中。マルチホップ通信を実現する独自通信プロトコルによる日本市場対応品は2013年秋にもサンプル出荷を開始すると同時に、ZigBee IPなどの標準仕様への対応も進めている。
2.4GHz帯で安定したネットワーク構築する技術も提案
東京エレクトロンデバイスブースでのリニアテクノロジー製2.4GHz無線センサーネットワーク用IC/モジュールのデモ。多くの2.4GHz帯無線が飛び交う環境ながら、20個を超えるモジュールがメッシュネットワークを構成して、接続を維持した (クリックで拡大)
920MHz帯無線関連の展示が目立つ中で、2.4GHz帯無線を使ったM2M、IoT向けの提案も行われた。
東京エレクトロンデバイス(以下、TED)ブースでは、リニアテクノロジーの2.4GHz無線センサーネットワーク用IC/モジュールの展示を行った。同IC/モジュールには、高い信頼性と耐障害性を確保しながら低消費電力を実現する独自メッシュ型無線ネットワーク技術「SmartMesh」を搭載している。1ms精度の時間同期通信により、動作時間を最小限に抑えるほか、環境に応じて使用する周波数チャンネルを切り替えるチャンネル・ホッピング技術などにより「劣悪な状況でも高い確実性でデータを伝送できる」(TED説明員)という。2.4GHz帯は無線LANなどにも使用され、920MHz帯に比べ、電波干渉が多いと懸念されるが、2.4GHz帯無線が多く飛び交う展示会場で、20個を上回るモジュールが安定して通信する様子を実演し、「安定性」をアピールしていた。
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