“Japanese English”という発想(後編):「英語に愛されないエンジニア」のための新行動論 ―番外編―(2/4 ページ)
英語は米国英語/英国英語だけでなく、国の数だけあって、日本では「日本英語(Japanese English)」がそれに当たります。皆さん、気後れすることなく、この日本英語を使い、英語の“ようにみえる”メッセージを極東の国から怒涛(どとう)のように発信しようではありませんか。
「日本英語」とは?
こんにちは。江端智一です。今回は、前回に引き続き、私の提唱する「日本英語(Japanese English)」の内容をご説明し、それを世界に発信していくことについて、考えてみたいと思います。
「日本英語」とは、どのようなものでしょうか。
「日本英語」の基本概念は、中学英語教科書のキーセンテンスをベースとしています。われわれが「英語」を使おうとする時、よりどころとなる「型」であるとも言えます。われわれは終生、このキーセンテンスの呪縛から逃れることができないように洗脳されていると言ってもよいかもしれませんが――例えば、「〜〜がある」→“There is 〜〜”であり、自分の意見を言うときは、なんであれ、“I think that”でスタートするなどが代表例ですが――それはそれでよいのです。
では、江端私案の「日本英語」指導要領の概要と、その理由を以下に述べます。
(1)発音は、カタカナ発音で十分。発音記号の使用は廃止する
カタカナ英語発音で、十分通じる。通じなかったケースは、圧倒的に少ないから。
(2)日本語と同じように[a,i,u,e,o]の母音をベースとして発音する。子音を判別するような試験は廃止する
日本語に子音を区別する文化・風習はない。日本人に聞こえない子音を履修するのは、時間の無駄であるから。
(3)イントネーションの位置、強弱は、どうでもよいものとする
イントネーションが異なっていても、概ね通じるから。
(4)単数形、複数形、“the”“a”のようなオブジェクトの指定子という考え方は、無視または省略してもよいものとする
日本はオブジェクトを無視またはあいまいにすることを、古来より継承している。これは文化として浸透しており、また社会においても重要な要素となっている。数を特定するオブジェクト指定子や複数形の考え方は、日本文化に合わないから。
(5)自動詞に目的語を伴っても、また他動詞に不定詞を伴っても、どちらもよいものとする
英語の自動詞、他動詞の区別は、日本の動詞の使い方と親和性がなく、区別する明確な理由もない。また、区別しないで使っても、大抵の場合、理解してもらえるから。
(6)時制は、現在、未来、過去の3種類だけでよいものとする。完了形の履修はオプションとする。時制の一致も厳密に適用しないものとする
英語の時制の考え方は、日本語と根本的に異なるので、我が国の基本言語である日本語に合わせるのが合理的であるから。
(7)使役の受動態の主体は、動詞の種類に関わらず、前置詞の区別を行わず、全て“by”で受けてもよいものとする
“to””for”“toward”、その他いろいろなバリエーションがあるが(また、論理的な説明もできるらしいが)面倒であるから。
(8)第4文型の2つの目的語は勿論、主語と目的語の位置が入れ替わってもよいものとする
このような使い方をしても、大抵の場合、理解してもらえるから。
(9)副詞と、形容詞は区別して使う必要はないものとする。名詞を副詞で形容しても良いものとする。また、英単語は、ローマ字表記で記載してもよいものとする
意味が通じるケースの方が多いから。
(10)可算名詞、不可算名詞は区別しないものとする
あー面倒くさいな。どーでもいいだろうがよー! そんなもん!!
あーこほん。最後に本音が漏れてしまいました。大変失礼致しました。
上記の具体例をひと言で言えば、日本人向けの「英語の規制緩和」「日本人向けの英文法の再構築」――まあ、はっきり言えば「英語の徹底的なルール無視」です。
文法や英単語の綴り、そして発音が正しいことは「望ましい」ですが、それによって「使われない英語」を教育し、英語を使えない日本人を大量生産したところで何の意味があるでしょうか?
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