「Snapdragon」で低価格LTEスマホが製造可能に、4Gチップ市場は競争が激化:ビジネスニュース 業界動向
クアルコム(Qualcomm)は2013年12月、LTEモデムを搭載した64ビット対応のアプリケーションプロセッサ「Snapdragon 410」を発表した。同プロセッサによってLTE対応のスマートフォンが安価に製造できるという。LTE対応のプロセッサ市場は競争が激化しそうだ。
QualcommがLTE向けの最新モバイルプロセッサを発表した。4G(第4世代)通信業界では、BroadcomやMediaTekなども加わって、競争が激化しそうだ。
Qualcommが発表したのは、同社のアプリケーションプロセッサ「Snapdragon」の新製品「Snapdragon 410」である。28nmプロセスを使用した64ビット対応のSoC(System on Chip)で、GPU「Adreno」の最新版「Adreno 306」を搭載している。1300万画素のカメラに対応し、1080pのHD動画の再生が可能だ。
同社は、今後発売する全てのSnapdragonでLTEをサポートする計画であることも明らかにしている。これにより、中国を含む世界中のミッドレンジ携帯電話機市場を狙う。なお、中国では2013年12月4日に、4Gネットワークの商用が許可された。
Qualcomm Technologiesでシニアバイスプレジデント兼COO(最高執行責任者)を務めるJeff Lorbeck氏は、「Snapdragon 410の発売によって、150米ドル以下のスマートフォンにLTEを搭載できるようになる」と述べている。
Snapdragon 410は、2014年初頭にサンプル出荷を開始する。同年後半には同チップを搭載した携帯電話機が発売される見込みだ。Qualcommは今後、拡大する4G携帯電話機市場でのシェア獲得に向けて、BroadcomやMediaTekと競うことになるだろう。
今後は、低価格スマホにもLTEの浸透が進む
Broadcomで最高技術責任者(CTO)を務めるHenry Samueli氏は、EE Timesの取材に対し、「LTEの普及は、誰も予想しなかったほどのスピードで進んでいる。世界中の国々が、LTEへの対応に真剣に取り組んでいる。これまでは、主にハイエンドのスマートフォンがLTEに対応していたが、今後は普及価格帯のスマートフォンにもLTE対応機種が増えていくだろう」と述べている。
同氏は、「当社は、ルネサス モバイルを買収したことで、ノキア*)が10年かけて開発してきた非常に成熟したLTEモデム技術を獲得し、次のステップに踏み出すことができた」と付け加えた。
*)ルネサス モバイルは、ルネサス エレクトロニクスが2010年11月にNokiaのモデム技術開発部門を約2億ドル(当時の為替レートで約180億円)で買収したことを契機に2011年1月に発足した(関連記事:潰れるはずだったルネサスモバイル、ブロードコムが買収)
Samueli氏によれば、Broadcomが今後発表するアプリケーションプロセッサは、TD-LTEもサポートする予定で、まずはデュアルコア版、その後クアッドコア版を発表するという。最終的には、LTE-Advancedに対応した薄型モデムの発売を目指す。
市場調査会社であるThe Linley Groupの主席アナリストを務めるLinley Gwennap氏は、「Snapdragon 410は、まだ量産出荷が始まっていないので、競合他社が追い付く時間は十分ある」と述べる。
同氏は「Qualcommはハイエンド機種で強いが、ローエンド機種で市場をリードしているのはMediaTekだ。ローエンド機種ではあまりLTE対応の需要がない。だが、Qualcommは、Snapdragon 410によってその傾向を変えようとしている。2014年は、QualcommとMediaTekが互いにシェアを奪い始める可能性がある」と付け加えた(関連記事:ローエンドスマホで苦戦するQualcomm、新しいSnapdragonで巻き返しか)。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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