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インタビュー

日本で最先端製品を開発/生産し、日本メーカーの世界展開を支えるタイコ エレクトロニクス ジャパン 社長 江部秀氏

タイコ エレクトロニクス ジャパン(以下、TEジャパン)は、2020年に売上高倍増を目指し、日本での開発、生産機能を強めている。「2014年は、日本のアイデンティティーの復活を目指したい」と語るTEジャパン社長の江部秀氏に2014年の事業戦略などについて聞いた。

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 電子部品大手TE Connectivityの日本法人・タイコ エレクトロニクス ジャパン(以下、TEジャパン)は、2020年に売上高倍増を目指し、日本での事業強化を実施している。2013年には、自動車向けをはじめとする最先端コネクタの開発、生産を一貫して行う掛川工場を稼働させるなど、日本での開発、生産機能を高めている。「2014年は、日本のアイデンティティーの復活を目指したい」と語るTEジャパン社長の江部秀氏に2014年の事業戦略などについて聞いた。


5年、10年先を見据えて大きな投資

EE Times Japan(以下、EETJ) 2013年を振り返ってください。

江部氏 2013年は、市場全体はあまり成長しなかった1年だった。中国市場の成長は緩やかで、欧州市場は低迷が続いた。米国市場も回復傾向にあるが、需要を引っ張るようなところまでの回復とは言い難いだろう。用途別でも、ご存じのように家電関連は低迷が続いている。スマートフォン関連は悪くはないが、その半面、PCは良くない。

 TEジャパンの業績に限っても東日本大震災からのリカバリーがあった2012年から、成長を遂げるところまでには至らなかった。やはり民生機器分野の低迷の影響が強く残った。ただ自動車関連については、2012年並みを維持した。

EETJ 2013年は、長年、準備してこられた掛川工場が稼働しました。

江部氏 開発、生産機能を持つ掛川工場が稼働した。掛川工場の目的は、日本発の技術、生産を日本で確立すること。そのバックグランドには、日本で最先端の技術を開発し、日本で最先端の車を作って世界展開している日本の自動車メーカーの存在がある。われわれもそうした日本の自動車メーカー向けに、技術、ニーズを先取りした製品で世界展開していくために、日本で開発、生産していこうと5年、10年先を見据えて大きな投資を行った。

EETJ 稼働状況はいかがですか。

 稼働状況は当初の計画通りで、現状、80%程度の稼働率で、2014年春ごろには100%の稼働率を達成できるだろう。開発、生産の一貫工場であり、生産効率や品質向上という点で効果が表れてきている。増強計画だが、今後検討していく。ただ、掛川工場は新しい最先端製品の開発/生産を担う工場であり、生産が安定してきたものは順次、海外の工場に移管していくため、稼働率100%でもすぐに増強が必要というわけでもない。

2015年にはタイ工場が稼働

EETJ 日本から世界への技術発信という面での進捗(しんちょく)はいかがですか。

江部氏 日本国内工場から海外への技術発信は、従来工場でも実施していたことではあるが、掛川工場の稼働でさらに加速するだろう。

 今後、掛川工場から世界展開していくものとしては、ハイブリッド車用コネクタなどになるだろう。中国などの海外工場もより高度な生産技術を身に付ける必要があり、われわれTEジャパンとして世界に展開できればと考えている。

 また、2015年には、東南アジア地域での需要増を見込んでタイ・チャチューンサオ県のゲートウェイシティ工業団地に工場を新設する計画であり、もちろんTEジャパンとしても技術指導を実施していきたい。

2014年は、売上高5%成長を計画

EETJ 2014年の市場はどのように見られていますか。

江部氏 特に自動車関連は、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車といったエレクトロニクスの比率が高いタイプの自動車需要がさらに高まる見通しであり、期待している。また中国市場も復活し良くなってくるだろう。アジアや米国、欧州も急速ではないだろうが、次第に良くなってくると思う。

 これらの状況から、TEジャパンとして2014年はプラス5%程度の売上高伸長を見込んでいる。

日本のメーカーでしかできない製品を

EETJ TEジャパンとしての抱負をお聞かせください。

江部氏 少し大げさかもしれないが、日本のアイデンティティーの復活を目指したい。韓国、中国メーカーの台頭に押されて、日本の強かった部分が弱まってきた。掛川工場の狙いでもあるように、新しい技術、新しいトレンドを日本から発信していきたい。

 2020年の東京オリンピック開催も決定し、「2020年」という1つの指標、目標ができた。それに向けて、民生、通信、自動車それぞれが進んでいくことになるだろう。

 TE Connectivityはコネクタメーカーとして過去20〜30年前は圧倒的に市場をリードしてきた。競争が激しい今の時代も、過去と同じようにリーダーシップを発揮していきたい。特にアジア市場に向けて、日本のアイデンティティーを強力に打ち出して、存在感を高めたい。

 そのために、日本の顧客との連携を深め、TEジャパンからアイデンティティーを生み出すような提案をしていくことが必要だろう。

EETJ アイデンティティーを生み出すような提案とはどのようなものですか。

江部氏 アジアメーカーに対し、コストだけの競争であれば、かなわないだろう。だからこそ、どこでも作れるものではなく、日本でしか、日本のメーカーでしか、できない製品を作らなければならない。付加価値のあるものを作ることが重要になる。

 そのためにも、われわれは、顧客ニーズをくみ取ることが必要であり、コミュニケーション力を強くして付加価値の高い提案を行っていく。

 TE Connectivityはグローバルに工場、エンジニアリングを準備できている。日本で作ったものを世界展開するということが、TE Connectivityとしてできる。顧客側で行わなければならないことも多い世界の各拠点での部品共通化や共有化がわれわれで提供できる。こうしたTE Connectivityの強みを生かした提案も積極的に行っていく。

売上高は加速度的にアップする

EETJ 2020年に売上高倍増達成を掲げている中で、2014年の5%成長は少し物足りないようにも思えます。

江部氏 物足りなく思われるかもしれないが、われわれの売上高のうち5割を占める自動車向けは、売り上げ計上、売り上げ拡大に時間がかかる。そのため、年を追うごとに売り上げ成長は加速度的にアップしていく見込みであり、売上高倍増達成は可能だと考えている。

 自動車に搭載されるコネクタの数は今後も増え続ける。ハイブリッド車は、従来車に比べ約3割電子部品の搭載数が多い。そして、2020年には自動車のほとんどがハイブリッド車になるだろう。加えて、最近話題になっている自動運転機能も、センサー、カメラ、コンピュータの搭載規模を大きくさせる。2020年に向けて自動運転機能も徐々に実現される見込みであり、市場の拡大は続く。

EETJ 民生機器や産業/通信機器向けの事業についてはいかがですか。

江部氏 もちろん、今後も継続して強化を続けていく。自動車向けと同様に、民生機器や産業/通信機器向けでも、戦略的顧客との連携を深めて、付加価値の高い提案を行っていく。顧客数の多い産業機器市場に対しては、販売代理店をより活用して、顧客とのリレーションシップを高めていきたいと考えている。

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