MediaTekやPixelworksなどモバイル向けビデオ後処理技術提案を加速:2014 CES
大型テレビでは搭載が当たり前となりつつあるフレーム補間機能などのビデオ後処理技術をモバイル機器にも搭載しようとする動きが活発化している。2014年1月に行われた「2014 International CES」(米国ラスベガス)でも、MediaTekやPixelworksなどが独自のモバイル機器向けビデオ後処理機能をアピールした。
フレーム補間機能などビデオ後処理機能は数年ほど前から、大画面のハイビジョンテレビ(HDTV:High Definition Television)の高画質化を実現する上で不可欠な機能として位置付けられるようになっている。2014年に、このビデオ後処理機能における新たな領域を切り開いていくと期待されているのが、モバイル機器だ。
Pixelworksは、「2014 International CES」(米国ラスベガス、2014年1月7〜10日)の開催期間中に、ラスベガスホテル(Las Vegas Hotel)のスイートルームにおいてデモを披露し、ディスプレイ処理機能を搭載したモバイル機器と搭載していない機器の画質を比較して見せた。同社はこのビデオ処理ソリューションについて、2014年前半には市場投入できる予定だとしている。
MeditaTekは、別のホテルのスイートルームにおいてデモを行い、大画面の薄型テレビに組み込んだ自社開発の「画質(PQ)エンジン」を披露した。同社のホームエンターテインメント事業部門は、被写体をクリアに捉えられる機能の実現に向けて、このPQエンジンを開発したという。同社の担当者は、「当社のテレビ用SoCの供給先であるソニーやパナソニック、シャープとの協業により、高画質化を図るためのあらゆるノウハウを取り入れながら開発を進めてきた」と述べている。
真のオクタコア
MediaTekでインターナショナルセールス/マーケティング担当ゼネラルマネージャを務めるFinbarr Moynihan氏によると、同社は現在、CPUコアを8個搭載する同社最新のモバイルアプリケーションプロセッサ「True Octa(真のオクタコア)」に、PQエンジンを移行させているところだという。同氏は、「今後、モバイル機器の画質を向上させていく上で鍵となるのが、60Hz駆動の高解像度モバイルディスプレイにおいて、フレームを繰り返さずに、24Hz映像の映画や30Hz映像のスポーツなどのコンテンツを表示できる手法を確立することだ。当社は、フレーム補間によって、オクタコアのパイプラインの中でビデオディスプレイ処理を行っている」と述べる。MediaTekは、「MEMC(Motion Estimation/Motion Compensation:動き予測/動き補正)」技術をベースとした時間的補間を行っているという。
MediaTekは、今回のCESにおいて、モバイル機器を用いて画質を比較するデモを行っていない。しかしMoynihan氏は、「当社のモバイルアプリケーションプロセッサは、モバイル機器の画質を確実に高められる」と主張する。
Pixelworksのデモには大勢の人が集まっていたことから、今後モバイル業界において、画質の重要性(および「Retina」のような高解像度ディスプレイを搭載するモバイル機器にディスプレイ処理機能を搭載する必要性)が高まっていく可能性があるといえる。
Pixelworksのプレジデント兼CEOであるBruce Walicek氏は、CES会場においてEE Timesのインタビューに応じ、「当社が開発した新しいモバイル向けディスプレイ処理ソリューションは、振動や被写体のブレを防止することができる。2014年前半には市場投入できる見込みだ」と述べている。
Pixelworksは製品アーキテクチャの詳細を明らかにすることを拒否したが、信号がディスプレイ・シリアル・インタフェース(DSI)に送られる直前にディスプレイ処理機能を実行する計画のようだ。DSIはホスト(映像データの源)とデバイス(映像データの送り先)間のシリアルバスである。
モバイルシステムメーカーはPixelworksのソリューション向けにアプリケーションプロセッサを変更したり、システム全体を再構築したりする必要があるのか、という問いに対し、Walicek氏は「その必要はない。当社はモバイルのエコシステムを十分認識している」と答えた。
Pixelworksのシニア・バイスプレジデントであるRichard Miller氏は、同社のディスプレイ処理ソリューションがモバイル機器の「システムレベルの消費 電力を削減しながら、メモリ帯域幅を改善する」と断言した。
Pixelworksがラスベガスのホテルのスイートルームに並べて置いたデモ映像には、目に見える違いがあった。ディスプレイ処理を施したモバイル機器は、物や人物がスクリーンの端から端へ動く時の不快なブレの影響が是正されており、映像がよりスムースになっていた。
ARMやImaginationはどうなのか?
だが、すべてのメーカーがモバイル映像の後処理ソリューションを用意しているというわけではなさそうだ。
ARMのCTOであるMichael Muller氏は、EE TimesがCESで行ったインタビュー中にモバイル機器での映像の後処理の必要性について問われ、ARMではモバイル映像の質を高めることを重要視していないと述べた。Muller氏は、ARMのエコシステムのパートナーがARMコアを利用してその分野に手を出しているかもしれないと示唆した。
一方、Imagination Technologyのエグゼクティブ・バイスプレジデントで、マーケティング部門を統括するTony King-Smith氏は、モバイル機器のディスプレイ処理やモバイル映像の後処理を「間違いなく重要な分野」と称した。King-Smith氏はかつて6年以上にわたり、パナソニックが欧州に置く半導体開発の戦略的拠点に勤めていた。そのため、モバイル映像の問題をよく理解しているようだ。同氏は「映像の後処理を扱うための正しい方法は、グラフィックス・パイプラインだ」と強調した。
一方、NXP Softwareは「コンテンツとスクリーン間の体験のギャップ」を埋めようと躍起になっている。同社はモバイルプラットフォーム向けに画像を鮮明にするソフトウェアのアルゴリズムを売り込んでいる。
NXP Softwareのアプリケーション部門で製品・開発マネージャを務めるThomas Davies氏は、2013年にEE Timesに対し、「リビングルームのHDテレビの体験をモバイル機器でも実現する」という同社の計画の概要を語った。Davies氏は、「ImaginationのGPUコアもしくはARMのMaliのいずれを使っていようが、今日のマルチコアのアプリプロセッサは非常にパワフルであり、映像の鮮明化やインテリジェント・スケーリングなど十二分にできる」と述べた。
【翻訳:青山麻由子、田中留美、編集:EE Times Japan】
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