飽和し始めたタブレット市場、今後は成長が減速:ビジネスニュース 業界動向
破竹の勢いで成長してきたタブレット端末市場だが、やはり陰りが見え始めてきたようだ。新興国では力強い成長が続いているものの、先進国、特に米国では飽和状態に近づいているという。
米国の市場調査会社であるIDC(International Data Corporation)によると、タブレット端末市場では、売上高は引き続き増加しているものの、米国をはじめとする先進国の市場が飽和状態に近づいていることから、これまでの急速な成長が今後減速に向かう見込みだという。
タブレット端末の世界出荷数量は、2012年には1億4420万台だったが、2013年には前年比50.6%増となる2億1710万台に達した。しかし、2012年第4四半期は前年同期比87.1%の伸びを記録していたことから、これまでの急速な成長ペースが鈍化しているといえる。
IDCのタブレット端末部門でリサーチディレクタを務めるTom Mainelli氏は、発表資料の中で、「米国などの先進国のタブレット端末市場が飽和状態に近いことは明らかだ。一方、新興国では力強い成長が続いているが、ここ数年のような世界的な急成長を後押しするには不十分である」と述べている。
さらに同氏は、「成熟市場では、仕事で使用する商用タブレット端末の売上高は引き続き伸びていく見込みだが、コンシューマ向け製品は伸び悩んでいくだろう。その要因としては、タブレット端末の普及が大幅に進んだことや、値下げ競争が激化していることなどが挙げられる。タブレット端末市場は2014年以降、さらに厳しい状況に直面すると予測される」と述べる。
また同氏は、EE Timesのインタビューに応じ、「米国をはじめとする一部の市場では、2014年に売上高が減少することを予測させる明らかな兆候が見られる。中でもAppleは、市場の飽和によって生じる問題に直面しつつあるようだ」と述べている。
タブレット端末市場は、自宅や勤務先でタブレット端末を使用する消費者がけん引してきた。現在、こうした消費者の間で市場が飽和し始めている。消費者は、最新モデルのタブレット端末を購入すると、旧型の製品を手放していく。このような状況は、何年か前のPC市場とよく似ている。
同氏は、「PC市場では、飽和状態に達するまでに長い期間を要したが、タブレット端末市場ではそれが急激に進んでいる。今後は、さらなるIT化に伴って商用タブレット端末の売上高が増加していく見込みだ。しばらくは、個人用のタブレット端末を仕事で使用する消費者が大半を占めるものの、将来的には商用タブレット端末の売上高が増加していくことになるだろう」と述べている。
タブレットのシェアは、上位5社で全体の2/3
2013年第4四半期におけるタブレット端末市場では、業界トップ5であるAppleとSamsung Electronics、ASUS、Lenovo、Amazonのシェアが、合計で全体の2/3に達した。同四半期におけるAmazonの出荷数量は、前年比1.7%減となったが、Lenovoは、高い成長率で伸びている新興市場での位置付けを高めたことにより、前年同期比325%という驚異的な成長率を記録した。
IDCのタブレット端末追跡リポート部門でリサーチアナリストを務めるJitesh Ubrani氏は、発表資料の中で、「Lenovoは、中国のホワイトボックスメーカーのインフラをターゲットとしたことにより、低価格のタブレット端末の出荷数量を増大させた。これにより、2012年第4四半期にはわずか1.3%だったシェアを、急激に拡大させている。同社は、新興市場における強みを持ち、PCやスマートフォンなどの関連市場でもシェアを拡大していることから、2014年のタブレット端末市場においても確固たる位置付けを確保し、さらなる成長を実現できるだろう」と述べている。
一方、業界のリーダーであるAppleは、Lenovoとは対極の例を示している。Appleは成熟市場において優れた業績を達成してきたが、そのために市場飽和のリスクに直面している。Appleの出荷数量は、2013年第3四半期には1410万台だったが、同年第4四半期には2600万台に増加した。ただし、2012年第4四半期には2290万台だった。
2013年第4四半期におけるAppleの市場シェアは33.8%で、同年第3四半期の29.7%から増加したが、2012年第4四半期の38.2%からは縮小している。Samsungは、幅広い製品シリーズをそろえたことや、米国の通信事業者からのサポートが増加したことなどが後押しとなって、引き続き業界第2位の座を維持している。Samsungの市場シェアは18.8%で、その大部分が、利益率が低い製品や新興市場向け製品などによるものだ。こうした製品が長期的に、同社のタブレット端末市場における成長を支える源となるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 2014年のタブレット市場、アップルやサムスンは厳しい価格競争に直面
タブレット端末市場の成長は2014年も続くとみられている。アジア太平洋地域や南米では、低価格の製品が続々と投入される見込みで、アップルやサムスン電子は厳しい価格競争にさらされると予想される。 - タブレット出荷台数、2015年にPCを上回る見込み
タブレット端末の出荷台数がノートPCを抜く日は近いようだ。勢いに乗るタブレット端末に比べ、PC市場は縮小が続くと予想されている。とはいえ、ビジネスユーザーの間では、やはりタブレット端末よりもPCが好まれる傾向があるという。 - タブレット向けSoC市場でIntelのシェアが急増
2012年のタブレット端末市場において、Intelの存在感はほぼないに等しかった。だが、ここのところ、Intelはタブレット向けSoCで確実にシェアを伸ばしてきている。