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産総研、半導体型単層カーボンナノチューブの選択的合成に成功新材料

産業技術総合研究所は、半導体型単層カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に成長させる技術を開発し、半導体型単層CNTの選択率向上による薄膜トランジスタの特性向上を実証したと発表した。

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 産業技術総合研究所(以下、産総研)ナノチューブ応用研究センター 首席研究員である畠賢治氏と同センター スーパーグロースCNTチーム 主任研究員の桜井俊介氏らは2014年2月12日、半導体型単層カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に成長させる技術を開発し、半導体型単層CNTの選択率向上による薄膜トランジスタの特性向上を実証したと発表した。今回の開発成果により、「単層CNTが酸化物半導体など従来の材料特性を上回ることは十分可能と見込まれ、従来にない柔軟性や集積度を持つフレキシブル電子デバイスやLSIの次世代材料への応用の実現が期待される」(産総研)という。

 半導体型の単層CNTは、その高い電子移動度などから新しい超低消費電力トランジスタの材料として期待を集めている。さらに、従来の半導体材料では達成できない「曲げ」、「伸縮」、「印刷による作製」が可能な半導体デバイスを実現できる材料としても注目されている。

金属型単層CNTが混ざってしまう

 しかし、単層CNTは、合成時に金属型のCNTが混ざり、CNT電界効果トランジスタは本来の特性を発揮できず、一般的な半導体のトランジスタより特性が劣ってしまうという問題を抱えている。

 金属型のCNTの混入を防ぐ必要があるが、半導体型単層CNTと金属型単層CNTの構造の違いはわずかであり、「従来の単層CNT合成技術では半導体型CNTと金属型CNTの作り分けが極めて困難であった」(産総研)という。産総研では2013年12月に単層CNT合成後に、混合物を金属型と半導体型へ分離する技術も開発発表しているが、合成後の分離技術では、「1%程度の金属型CNTが残存してしまう点や分離プロセスに伴うコストなどの問題があった」とする。

水分、水素量で調整

 産総研では、単層CNTの合成法として最も一般的な化学気相堆積(CVD)法での選択的半導体型単層CNTの合成を模索。その中で、成長するCNTの構造との関係が強い金属触媒微粒子の構造に着目し、同微粒子をCNTの成長前に炉内のガス雰囲気で調整する方法を考案した。考案した方法に基づき、鉄触媒の微粒子に水分と水素の混合ガスを供給して触媒を調整、混合ガス供給を停止した直後に原料である炭化水素ガスの供給を開始して単層CNT薄膜を合成させた。その際、水分、水素量を最適化して、「最大で98%の高い選択率で半導体型単層CNTを合成できた」(産総研)という。この選択率は、「半導体CNT選択的合成技術の中で(従来最高だった97%を上回り)最高の値である」としている。


開発した半導体CNT選択的合成プロセスと従来プロセスの比較イメージ 出典:産業技術総合研究所

 産総研では、この手法で合成した単層CNT薄膜を用い、単層CNTのネットワーク構造が形成されている薄膜をチャネル層とした電界効果トランジスタを試作した。従来の金属型CNTの混入比率が高かったCNT薄膜では、回路の短絡を防ぐために100μm程度のチャネル長が必要だったが、試作トランジスタは5μmという短いチャネル長を実現。その上で、オン/オフ比1万以上、移動度17cm2/Vs、オン電流1.3S/mと、従来技術によるCNT電界効果トランジスタを大きく上回る特性を示したとする。


作成した単層CNT電界効果トランジスタの伝導特性。左のグラフは、ドレイン電流-ゲート電圧を示し、右グラフはオン電流-オン・オフ比プロットによる過去のCNT電界効果トランジスタとの特性比較となっている (クリックで拡大) 出典:産業技術総合研究所

従来特性を上回るデバイス実現に道

 産総研では、「この結果は、半導体型単層CNTの分離技術を組み合わせて半導体型単層CNT純度をさらに向上させれば、電界効果トランジスタ特性のさらなる向上が可能であることを示している。これらにより、単層CNTが酸化物半導体など従来の材料特性を上回ることは十分可能と見込まれ、従来にない柔軟性や集積度を持つフレキシブル電子デバイスやLSIの次世代材料への応用の実現が期待される」という。

 また、「今後は、半導体型単層CNTの成長選択性を維持しながらより高収量、高密度に合成する技術開発を進める。将来的には塗布技術などと組み合わせて高集積フレキシブル回路の実現や、次世代LSI材料への応用を目指す」としている。

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