血管内を撮影する超小型デバイス、リアルタイムで3D画像を送信:医療技術
米大学が、カテーテル(医療用の柔らかい管)をベースにした撮影用デバイスの試作に成功した。血管内を撮影し、リアルタイムで3D映像を外部に送信できる。
米国ジョージア州のジョージア工科大学(Georgia Institute of Technology)は2014年2月18日(米国時間)、カテーテルをベースにした撮影用デバイスを試作したと発表した。血管内に挿入し、心臓の内部などの3D映像を撮影し、リアルタイムで外部に送信できる。同大学 メカニカルエンジニアリングスクールのF. Levent Degertekin教授らは、映像を60フレーム/秒で送信することに成功したという。
デバイスは、静電容量型超音波トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micro-machined Ultrasonic Transducers)アレイを搭載していて、接続した13本の細いケーブルで映像を送信する。このCMUTアレイは56個の超音波送信素子と、48個の受信素子が含まれていて、直径わずか1.5mmほどのドーナツ型をしている。
必要な時以外はセンサーを稼働させないよう、省電力用の回路も搭載されていて、消費電力は20mWほどだ。そのため、体内においてデバイスが発生する熱を抑えることができるという。
Degertekin教授は、「この撮影用デバイスによって、医師は血管の中全体を観察することができる。心臓専門医にとって、血管を詰まらせている箇所を明確に照らし出す懐中電灯のような役割を果たすだろう」と述べる。「医師が、血管や心臓の内部で起きている現象を確認したくても、現在は断面図しか得られない。血管をふさいでいる物質があるなら、その物質を前面、背面、側面などあらゆる角度から確認することが必要だ。そのような情報は、既存の機器では得られない」(同教授)。
血管内を動作する撮影用デバイスは、体外から撮影するよりも高精度の画像を提供できる。だが、撮影用デバイスが血管内を移動するには、デバイスが小型かつ柔軟性を備えていることと、血液内でも動作できることが必要になる。Degertekin教授らは、こうした課題を克服し、デバイスの小型化に成功した。
今後は、試作品を基に動物で臨床実験を行い、用途の可能性を探っていく。最終的には、FDA(米国食品医療品局)の認可を得るために必要な臨床試験を行うべく、医療機関にこの技術をランセンス提供する予定だ。
Degertekin教授によれば、将来的には、心臓のMRIにおけるインターベンション*)などへの応用や、デバイスの直径を400μmまで小さくするといった計画を考えているという。
*)心臓や血管、肝臓、脳、消化器などの病気に対する治療法の1つ。カテーテルを血管に挿入して行う。
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