リチウムイオン電池市場、拡大の鍵はウェアラブル機器:ビジネスニュース 業界動向
現在、スマートフォンやタブレット端末によって支えられているリチウムイオン電池市場。今後はスマートフォンなどの成長は鈍化することが予測されるため、新たな用途を見つけることが課題となっている。その筆頭に挙がっているのが、ウェアラブル機器だ。
ウェアラブル機器は、既にファッションの一部になりつつある。米国の市場調査会社であるIHSは、「こうした状況を受け、スマートウオッチやウェアラブルヘルスモニター、スマートグラスに電力を供給する電池の需要は、今後4年間で10倍に増加する」と予測している。
IHSは、同社の報告書「Power & Energy」の中で、「2014年における、ウェアラブル機器向け電池の世界売上高は600万米ドルと予想されるが、2018年には7700万米ドルに急増する見通しだ。主な要因は、ウェアラブル機器の需要の増加である。ウェアラブル機器の年間出荷台数は、2018年に5600万台に達すると予想される」と述べている。
IHSで電源/ストーレージコンポーネント部門のアナリストを務めるThomas McAlpine氏は、プレスリリースの中で、「民生機器市場では、電池の売上高が非常に高い成長率で推移している。ウェアラブル機器は、この成長を維持するためのカギとなる」と指摘している。「今後は、先進の小型コンピュータ技術と、健康やファッションに敏感な消費者のニーズを併せ持つ製品の出荷が急増すると予想される。具体的には、アクティブなライフスタイルを狙った、スマートウオッチや『Google Glass』のようなスマートグラスなどだ」(McAlpine氏)。
機器メーカーは、リチウムイオン電池よりもリチウムポリマー電池を好む傾向にある。リチウムポリマー電池のほうが軽く、より幅広い用途に適しているからだ。その結果、2018年には、ウェアラブル機器向け電池における世界売上高の73%を、リチウムポリマー電池が占めるようになると予測される。
同報告書によると、「ウェアラブル機器は新興市場であるため、現時点で携帯機器向けリチウムイオン電池市場の売上高成長を支えているのは、スマートフォンとタブレット端末だ。スマートフォンとタブレット端末の出荷台数は、2013年から2015年にかけて46%の成長が見込まれる。ただし、それ以降、成長率は減少に転じると予想される。さらに、リチウムイオン電池の平均販売価格(ASP:Average Selling Price)も低下する見通しであることから、携帯型民生機器向けリチウムイオン電池市場全体の成長に歯止めがかかると予測される」という。
McAlpine氏は、「そのため、新たな用途を探ることが、リチウムイオン電池市場全体にとって極めて重要になってくる。リチウムイオン電池が民生機器の技術革新に不可欠な部品であることは間違いない。ただし、同市場の成長を維持し続けるには、新しいウェアラブル機器がマスマーケットに登場し、受け入れられる必要がある。こうした状況は、近年誕生した他の製品カテゴリにおいてもよく見られる」と指摘している。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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