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くるくる巻ける超薄板ガラス、ショットが幅640mm品をロール状で製造へフィルムのような柔らかさと滑らかさ

ドイツの特殊ガラスメーカーであるショットは、厚さ100μm以下の超薄板ガラスの開発に注力している。2014年半ばには、幅640mmの超薄板ガラスをロール状で製造できる体制を整える予定だ。ロール状で量産できるようになれば、印刷エレクトロニクスなどの研究開発が進む可能性がある。

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 ショット(SCHOTT)は、約半世紀前から薄板ガラスの開発と製造を手掛けるガラスメーカーだ。厚さ100μm以下の超薄板ガラスの開発も積極的に進めていて、厚さが25〜100μmで幅が最大600mmの超薄板ガラスを、シート状(枚葉式)やロール状で提供している。2014年半ばには、640mmの有効幅(品質を保証できる幅)を実現したロール状の超薄板ガラスの製造が可能になる見込みだ。ショット日本 事業開発シニアマネージャーの黒木浩氏は「シリコンウエハーとガラスを張り合わせる際、640mmの幅があれば、300mmウエハーを横に2枚並べることができる。そのため効率よく張り合わせることができる」と述べる。

 超薄板ガラスは、エネルギー、モバイル機器、自動車といったさまざまな市場でニーズが高まっている。特にロール状のガラスは、印刷技術を利用して電子回路や有機EL照明素子を製造するプリンテッドエレクトロニクス(印刷エレクトロニクス)の開発を促進する可能性がある。ただし、ショットによれば、超薄板ガラスをロール状で量産できるラインを本格的に立ち上げているメーカーはほぼないという。そうした中でショットは、超薄板ガラスをロール状で出荷した実績を持つ。さらに、超薄板ガラスを数kmの長さで巻き取ることにも成功している。

 ショットの超薄板ガラスは、ダウンドローと呼ばれるプロセスで製造する。溶解ガラスを下方向に引き出し、ローラーで薄く伸ばしていく方式だ。これにより、薄いだけでなく、表面粗さ(凹凸の高さ)が1nm未満と滑らかなガラスを製造できるという。

 同社は製造技術だけでなく、切断、穴開け、剥離、接着といった加工技術の開発も進めている。超薄板ガラスはその薄さ故に、切断などにも高い技術が必要になる。ガラスである以上、「割れる」という問題が常につきまとうからだ。特にロールで出荷した場合は顧客が切断することになるため、顧客の設備を考慮してアプリケーションエンジニアを派遣するなど、十分なサポート体制を構築したいとしている。

フィルムのように巻ける超薄板ガラス(左)。右は、ショット日本本社のショールームにあるロール式ガラスで、厚さは50μm、幅は500mm(20インチ)。見にくいが、ガラスがフィルムのように巻かれている。超薄板ガラスの曲げ半径は、厚さ25μmのときに約10mmだという。なお、ショールームは2014年3月にオープンしたばかりで、ガラスを用いたアプリケーション開発に取り組んでいるメーカーを対象に公開している(クリックで拡大)

急冷でも割れない、堅ろう性を実現したガラスセラミックス

 ショットは、高機能ガラスセラミックス「NEXTREMA(ネクストリーマ)*)」の販売も強化する。NEXTREMAは2012年に発売を開始したもの。最高使用温度が950℃など、過酷な環境での使用に耐え得る堅ろう性を実現していることが最大の特長だ。自動車、航空宇宙、医療機器、民生機器、エネルギー、建築といったさまざまな分野をターゲットとしている。

*)NEXTREMA:Next EXTREme MAterial(次世代超高機能素材に由来)

 NEXTREMAは、高温に熱してからの急速冷却に特に強い。例えば800℃まで熱して10℃まで急速冷却した場合、一般的なガラス(ソーダライムガラス)はすぐに割れてしまうが、NEXTREMAには何の変化も起こらない。この特質は、ディスプレイの製造時間の短縮に役立つ。ショット アジア・パシフィック地域 セールスディレクターのユルゲン・シューマン氏は「ディスプレイの製造には、急速な加熱と冷却のプロセスが含まれる。これを短縮できれば製造コストを低減することができる」と述べる。

 NEXTREMAが対象とする主なターゲットはディスプレイ市場である。日本市場では、今後3〜4年の間に売上高最大1000万ユーロ(約14億円)を目標とする。NEXTREMAはアジア市場で順調に売り上げを伸ばしていて、日本においても拡販に力を入れていく。


「NEXTREMA」は、透明タイプ、半透明タイプ、色付きタイプなど6種類をそろえる。競合他社は1〜2種類のみが多く、豊富なラインアップはショットの強みだという(クリックで拡大)

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