アップルとサムスンの特許訴訟、結局はケンカ両成敗!?:両者に賠償命じる評決
2014年5月2日に評決が下された、アップルとサムスン電子の特許裁判。陪審団は、両社とも特許を侵害しているという結論に至った。ただ、今回の訴訟によって、サムスンが大きな痛手を受けることもなければ、アップルの優位性が揺らぐこともないようだ。
2014年5月2日(米国時間)、AppleとSamsung Electronicsの特許侵害訴訟に対する評決が下された。
Samsungに対する1億1963万米ドルの賠償額は、Appleが求めていた賠償金額(22億米ドル)を大きく下回るものだった。アナリストらは今回の訴訟について、「Samsungに大きな痛手を負わすことにも、Appleの優位を揺るがすことにもならなかった」と評している。
8人の陪審員は、Samsungに対し、Appleの特許3件を侵害したとして1億1963万米ドルの賠償を命じた。一方のAppleは、Samsungの1件の特許を侵害したとして15万8400米ドルの賠償を命じられている。評決のポイントは以下の通りである。AppleとSamsungの特許訴訟において、AppleによるSamsungの特許侵害が認められたのは今回が初めてだった。
- 訴訟の対象となっているSamsungのスマートフォンは、Appleの「クイックリンク」(647特許)を侵害している
- 対象となっているSamsungスマートフォンのうち6機種は、「スライドロック」(721特許)を侵害している
- 「ユニバーサル検索」(959特許)、「バックグラウンド同期」(414特許)については侵害していない
- Appleは、Samsungの特許であるフォルダ内の写真/動画の整理に関する機能(449特許)を侵害している
2度目となるAppleとSamsungの特許訴訟は、両者が勝者であり敗者でもあるといえる結果となった。
今回の訴訟で支払いを命じられた賠償金の額はSamsungが圧倒的に多い。また、Samsungによる特許侵害3件が認められたのに対し、Appleによる特許侵害と認定されたのは1件のみだ。この結果を受け、Appleは「今回の訴訟は、当社が勝訴した」と主張している。ただし、Appleが受け取る賠償金額は、請求していた額の5%強にすぎない。1年半前に行われた1回目の訴訟で認められた10億5000万米ドルの損害賠償と比べると、あまりにも少ない金額だ。今回の訴訟では、Appleが主張していた5件の特許侵害のうち、2件については「侵害はなかった」という判断が下された。
一方、Samsungは、Appleによる1件の特許侵害が認められたものの、同社が勝ち取った賠償金は請求していた額(総額600万米ドル)からは程遠く、同社がAppleに対して支払いを命じられた賠償額と比べてもあまりにも小さい。
だが、この評決によってSamsungが窮地に追い込まれたというわけではない。Appleは、Samsungが特許を侵害しているモバイル機器の米国での販売を禁止するように求めると予想されるが、Lucy H. Koh判事がこの訴えを全面的に支持するとは考えにくい。いずれにせよ、「Galaxy S5」をはじめとするSamsungの最新モデルは、今回の訴訟の対象にはなっていない。
陪審団は、「スライドロック解除」機能(721特許)について、Samsungが故意に特許を侵害したと判断したが、賠償額はわずか75万648米ドルだった。米国では故意に特許を侵害した者に対して3倍の賠償額の支払いが命じられる場合もあるが、Lucy H. Koh判事は今回の訴訟についてはこれを適用しなかった。
同訴訟の陪審団は2014年5月6日に解散した。陪審員は解任後、評決に関する各自の考えを公表できる。男女4人ずつで構成された今回の陪審団が、何を語るかが注目される。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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