エリクソンが考える“2020年の移動通信”:無線通信技術
エリクソン・ジャパンは、「5G(第5世代)」と「3GPPリリース13」を中心とした、「2020年に向けた移動通信の進化」について記者説明会を開催した。エリクソンでは、2020年ころに商用化が予定されている5Gを、単なるモバイル技術の進化ではなく、『ネットワーク化社会のためのネットワーク』と位置付けている。
エリクソン・ジャパンは2014年5月、「5G(第5世代)」と「3GPPリリース13」を中心とした、「2020年に向けた移動通信の進化」について記者説明会を開催した。エリクソンでは、2020年ころに商用化が予定されている5Gを、単なるモバイル技術の進化ではなく、『ネットワーク化社会のためのネットワーク』と位置付けている。そして、「5G世代は、進化する既存の無線アクセス技術(RAT:Radio Access Technology)と、新たな無線アクセス技術を組み合わせつつ、無線LANや固定系通信網も統合したネットワークを考えていく必要がある」と述べた。
ドコモと5G実証実験も
エリクソンはNTTドコモと共同で、神奈川・横須賀において5Gトライアルを実施する計画を2014年5月初めに発表している。このトライアルでは、屋外で15GHz帯を使って、10Gビット/秒以上のデータ通信を目指している。
無線アクセス市場は、「トラフィック量の継続的な増加」、「ネットワークに接続される機器の増大」、そして「データの転送速度やセキュリティの向上、低消費電力といった要件の多様化」などが課題となりつつあり、早急な対応が求められているという。こうした中で無線通信業界では、「いつでも」、「どこでも」、「誰とでも」、「何とでも」、「なんのも制約もなく」、情報へのアクセスとデータの共有ができる「ネットワーク化社会」の実現を目指して、さまざまな課題解決に取り組んでいる。5G技術もその1つといえる。
5G世代は10GHz以上の周波数帯を利用
エリクソン・ジャパンでCTO(最高技術責任者)を務める藤岡雅宣氏は、スペクトル拡張について「2020年までは6.5GHzまでの周波数帯を利用できる。2020年以降に実用化される5G世代には、10GHzより高い周波数帯を利用してトラフィック容量の増加やデータレートの高速要求に応えていくことになろう。ただし、軍事や衛星通信などで利用されている周波数帯もあり、電波を有効に活用していく必要がある」と話す。
また、10GHzまではLTEを進化させた技術を適用し、それ以上の周波数帯では新技術が必要になるとみている。例えば、10〜30GHz帯域では、データ転送速度が数Gビット/秒の新たな無線アクセス技術を、30GHz以上は多くのスモールセルを使ったミリ波技術などの適用が考えられている。5G世代およびそれ以降のデータ通信速度は、特定用途で10Gビット/秒、都市部などでは通常どこでも100Mビット/秒の通信環境が求められるとの見方がある。
藤岡氏は、5G世代の新たな事例にも触れた。一例として「大量MTC(Machine Type Communication)」と、「ミッションクリティカルMTC」を挙げた。大量MTCは、センサーやメータ、アクチュエータなど大量の機器が接続されるため、1つの基地局で大きなエリアをカバーする必要がある。ミッションクリティカルMTCは、遠隔医療や機器の制御などの用途を視野に入れている。データ遅延に対する許容範囲が限られ、高い堅牢性も要求される用途である。エリクソンでは5G世代に求められる要件もまとめた。「5Gではこれら全ての要件を満たす必要がある」(藤岡氏)という。
さらに藤岡氏は、5G世代に必要な技術要素や、将来の無線通信に関する研究で先導的役割を果たしてきた欧州のMETIS(Mobile and wireless communications Enablers for the Twenty-twenty Information Society)プロジェクトの目標などを紹介した。METISプロジェクトは2015年で終了するが、その後の研究母体となる「Horizon2020」や「5G PPP(5G Infra-structure Public Private Partnership)」についても、その概要を紹介した。
5Gにつなぐ「リリース13」
3GPPでは、2014年9月に「リリース12」の機能を凍結する。その後は「リリース13」の機能策定を始め、2015年12月をめどに、リリース13の機能を確定させる予定である。その後の「リリース14/15」が、いわゆる5Gと呼ばれる世代である。藤岡氏によれば、「リリース13はマイナーな変更ではなく、LETを進化させる大きなステップであり、5Gにつなぐ重要な技術である」と話す。
LTEの高度化に向けて、ライセンスバンドと非ライセンスバンドを組み合わせ、無線LANとLTEを1つのネットワークとして捉えることで、無線アクセス機能を強化できるという。さらに、遅延時間の低減、消費電力のさらなる削減、水平方向に加えて垂直方向までカバー領域を広げるマルチアンテナ技術などを、リリース13で取り組む課題として挙げた。
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