採用が拡大する2.4GHz無線「SmartMesh」――2014年秋にコンソーシアム発足へ:ワイヤレスジャパン2014
リニアテクノロジーは、「ワイヤレスジャパン2014」(2014年5月28〜30日)で「Dust Networks」(ダスト・ネットワークス)ブランドで展開する無線センサーネットワーク技術「SmartMesh」を紹介した。国内外で同技術の採用実績が拡大しており、リニアテクノロジー日本法人では、2014年秋にコンソーシアムを立ち上げ、さらなる普及加速を目指す方針。
リニアテクノロジーは、無線通信技術に関する展示会「ワイヤレスジャパン2014」(2014年5月28〜30日、東京ビッグサイト)で、「Dust Networks」(ダスト・ネットワークス)ブランドで展開する無線センサーネットワーク技術「SmartMesh」を展示した。国内外でSmartMeshの応用が進んでおり、ワイヤレスジャパン2014では多くの採用事例を紹介した。
時間同期、チャネルホッピングで低消費電力/高信頼性無線を実現
SmartMeshは、無線センサーネットワーク用途を主眼に開発された無線技術であり、高い信頼性と低消費電力を特長にする。IEEE802.15.4準拠の物理層を用いており、使用する周波数帯は2.4GHz帯。通信の信頼性を高めるため、15チャネル、75MHz幅で送信周波数を変化させるチャネルホッピング技術を導入。消費電力低減技術としては、各ノード(センサー端末など)が1ms以下という精度で時間同期する機能を搭載。同機能により通信時以外全てのノードで動作をオフするなどの制御が行え、消費電力を抑えられる。メッシュ型ネットワークによる通信が行え、対応する主な通信プロトコルは「WirelessHART(IEC 62591)」、「6LoWPAN」となっている(関連記事:無線センサーネットワーク用LSI、信頼性・耐障害性と低消費電力を両立)。
リニアテクノロジーは、SmartMeshを開発したDust Networksを2011年末に買収。2012年ごろから日本でもSmartMesh用システムLSIの販売を行っている(関連記事:リニアテクノロジー、無線センサーネットワーク製品群を国内で販売開始)。
採用事例を多数紹介
今回、ワイヤレスジャパン2014のリニアテクノロジーブースでは、「日本でも採用が増えてきた」(リニアテクノロジー日本法人でダスト・エバンジェリストを務める小林純一氏)というSmartMeshの採用事例を中心に紹介した。その1つとして、「10年ほど前から連携してきた」というエマソン(プロセス・マネジメント部門)での採用事例を紹介。エマソンでは、化学プラントなど向け監視/制御端末製品のワイヤレス化を推進。ワイヤレス対応製品は「全てSmartMesh+WirelessHARTの組み合わせで実現している」という。既に全世界で16万個を越えるSmartMesh搭載機器が出荷され、日本国内でも石油プラントや発電施設で利用されているという。
また、米国企業製のデータセンター向け温度センサーモジュール(日本ではNTTファシリティーズが販売)も紹介。同モジュールを複数使うことで、データセンター内の温度を3次元的に把握できる装置であり、サーバ/ストレージ機器が立ち並ぶ通路内にも設置する必要がある。「データセンター内のレイアウトは変更される場合もあり、電波が複雑に反射する環境で無線機を設置するには手間が必要だが、メッシュネットワーク、高信頼通信できるSmartMeshであればその必要がない」と採用の背景を説明する。
環境変化に強いという利点からの採用された事例としては、米国ロサンゼルス市での駐車スペース監視システムもその1つ。同システムは駐車スペース1台分ごとにSmartMesh対応センサー端末が埋め込まれる。センサー端末上に車があるか、ないかの1ビット情報を無線でクラウド上へ伝達するもの。センサー上に車が覆いかぶさるため、電波環境は極めて悪く、「動的にメッシュ型ネットワークを組めるSmartMesh利点が生かされてる分野」という。なお、ロサンゼルス市では既に2万台分の駐車スペースに同センサーが設置され、その結果、空きスペース情報提供による利便性の向上の他、駐車スペースの正確な利用頻度把握による駐車料金の適正化による駐車場収入増といった効果を生み「全米30都市以上で同様のシステムが採用されている」という。
太陽光発電システム用評価ボードも製品化
また日本発でSmartMeshの用途開拓も実施している。リニアテクノロジーの国内販売代理店である東京エレクトロンデバイス(以下、TED)は、メガソーラー発電システムなどに向けて、SmartMesh対応電力モニタ評価ボード「TD-BD-WSN5EPM」を展開している。
メガソーラー発電システムは、一般的に200枚以上の発電パネルで構成されるが、1枚の発電パネルに不具合が生じることで、システム全体の発電効率を大きく下げる要因となる。そのため、パネルの故障をいち早く検知し、修理することが求められる。しかし、「現状、パネルの故障を調査する手段は、パネル1枚ずつを検査する人海戦術が主」(小林氏)という。
その中で、TEDの同評価ボードは、各パネルの発電量をモニタリングするセンサー端末の開発評価用ボードとして開発したもの。温度センサーとともに電圧/電流を計測する電力センサーを搭載し、太陽光発電パネルの発電量を検出できる機能を備える。測定したデータは、もちろんSmartMeshを使って管理センターなどに伝送する仕組みだ。「ソーラーシステムは、パネルで電波が複雑に反射する環境であり無線ネットワークを構築するには難しく、SmartMeshが適する環境」という。また同評価ボードは、センサー用AFE(アナログフロントエンド回路)に低消費電力を特長としたリニアテクノロジー製ICを使用するなどし、システムとしての消費電力も大きく抑制。小型太陽光パネルの発電電力のみで動作でき、メンテナンスフリーの環境発電駆動モニタリング端末を実現することもできる。
50社規模でコンソーシアム発足へ
着実に採用事例を増やすSmartMeshだが、こうしたセンサーネットワークを狙った無線技術は多くあり、規格/技術間の競争が激しくなっている。特に昨今では、国内の920MHz帯無線などSmartMeshやWi-Fiといった2.4GHz無線よりも伝送距離の長いサブギガヘルツ無線に注目が集まっている。この状況に対し、小林氏は、「プラントや交通インフラなどの採用実績からも分かる通り、低消費電力で安定した信頼性の高い通信としてダストのSmartMeshは評価されており、そうした用途では、他の規格、技術と競合しない」と意に介さない。そして小林氏は、「日本で本格的なダスト・ネットワークス製品の提案、販売を開始して約2年になるが、日本でも着実に応用事例が増えてきた。ただ、それでも、電波環境が厳しい中で安定した通信を必要としているプラント/工場やインフラは多数あり、普及具合を登山に例えるなら、まだまだ1合目といったところ。さらにSmartMeshの普及を加速させていく必要がある」という。
そこでリニアテクノロジー日本法人では、2014年10月ごろをメドに、SmartMeshの普及拡大を狙った「ダスト・コンソーシアム」(仮称)を立ち上げる方針。小林氏は、「計測システムメーカーやそれら計測システムを設置するシステムインテグレーターやインストーラー、さらにはインフラ事業者、コンポーネントメーカーなど多数の参加を募り、SmartMeshに関するノウハウの共有化や連携した事業展開などを模索したい」という。そして、「50社ほどのメンバーで立ち上げる予定。コンソーシアム活動も通じて、1年後には、“2合目以上”といえる程度の普及度合いまで拡大させたい」としている。
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