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グーグルが変える? 自動運転車の役割ビジネスニュース オピニオン

グーグル(Google)が披露した新しい自動運転車は、大いに注目を集めた。グーグルは、この自動運転車を、「個人所有のクルマ」というよりも、乗客をA地点からB地点へ送り届ける“ロボタクシー”のような、「より便利な社会を築くためのツール」として強くアピールしている。自動車メーカーが開発している自動運転車とは、少し異なる役割を強調しているようだ。

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 2014年5月27日(米国時間)にGoogleが発表した自動運転車は、大きな注目を集めた(関連記事:グーグルが自動運転車を新開発、ハンドルもアクセルもブレーキもなし)。デモ用の自動走行車に対面した“乗客たち”が大いに驚いたことには、この車にはハンドルもペダルもない、テーマパークのライド系アトラクションに似た二人乗りの形状だった。

 Googleの新しい自動運転車は、同社が以前自動運転の実験に用いたトヨタ自動車の「プリウス」やAudiの「TT」などとは全く違う。レーザーレーダーシステムを屋根に取り付けた点は、これまでと同様である。


Googleの自動運転車と走行イメージ(クリックで拡大) 出典:Google

 自動走行車への取り組みを大胆に繰り返すGoogle。自動車メーカーではない同社が、自動運転車をめぐる議論を変えようとしているのは明らかだ。

 Googleは、現在の自動車の“進化版”として自動運転車を促進するというよりも、「ロボタクシー」のような全く新しい輸送機関として今回のプロトタイプをアピールしている。ロボタクシーは乗客を乗せてA地点からB地点に運ぶための乗り物である。

Googleの自動走行車の試運転の様子 出典:Google

 Googleのプロモーションビデオでもその点は明らかだ。Googleの共同創立者であるLarry Page氏は、このビデオのコメント部分で「これは自動運転車開発チームにとって次のステップだ。このビデオを見れば、それが分かるだろう」と述べている。

 予想される規制面や技術面での課題以外に、自動運転車にとっての最大のハードルは、“人間”だと筆者は確信している。より具体的には、“人間の心にある、マシンに対する根深い不信感”である。これは人間としてある程度は仕方のない心理だといえる。

 とはいえ、筆者が技術革新反対論者になったというわけではない。

 「ロボット」という言葉を生み出したチェコのジャーナリストKarel Capek(カレル・チャペック)から映画「ターミネーター」シリーズまで、ロボットやSFを扱う小説や映画は数多いが、お決まりのテーマの1つに、「人間を超えるレベルまで知性が発達してしまった慈悲深いマシン」がある。大抵マシンが暴走するのだが、人類にはそれを止める手段がないというものだ(関連記事:「スカイネット」が現実に? AIの未来像は“自我”がキーワード)。

 独自のメッセージを発信することに長けているGoogleは、こうした作品を意識したのではないだろうか。事実、同社のプロモーションビデオからは、人間が本能的に抱く“マシンに対する恐怖心”を和らげようとしている努力が見て取れる。

 それが功を奏しているのか、人々がよく「Googleの自動運転車がいかに革新的か」について何げなく話しているのを聞く。確かに革新的だ。だが現実問題として、もっと説得力のある説明がない限り、将来(2020年前後か)自動運転車に大金をつぎ込むことはできないだろう。

 Googleの自動運転車の外観や動きが普通の自動車とは違っていても、あるいは、自家用車の代用品ではなく個人用のバスやタクシーとして機能するよう設計されていたとしても、Googleの自動運転車はポイントを押さえていると筆者は感じている。

 Googleの共同設立者であるSergey Brin氏は、Googleの自動運転車は「ユーザーの周りの世界やコミュニティを変える可能性を持っている」と語る。「Googleの自動走行車は、不便な生活を送っている人の助けになる」とはあまり思わない人も多いかもしれない。だが、「自動走行車を、“個人向けのぜいたく品”から“より便利な社会を築くための手段”に変える」という、後戻りのできない議論にGoogleが火を付けたのは間違いないようだ。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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