4Kテレビ放送に対応した「12G-SDI」が登場:4K対応が待たれた放送機器のインタフェース
M/A-COMテクノロジーソリューションズ(MACOM/メイコム)は、放送機器間のビデオ信号伝送規格「SDI」で、伝送速度12Gビット/秒を実現する「12G-SDI」に対応するチップセット製品群の量産を2014年9月から量産する。同社では「リクロッカの他、ケーブルドライバ、イコライザなど総合的な12G-SDI製品群の量産化は世界初」とする。
4Kテレビ放送の試験放送が始まった中で、さまざまな放送機器の4K対応が進みつつある。4K対応機器を構築するためのデバイスの4K対応も急ピッチで進んできた。4Kビデオ処理に対応するFPGAをはじめ、バックプレーン、コネクタ、ケーブルも4Kビデオの非圧縮伝送が可能な伝送速度12Gビット/秒以上をサポートする製品が登場している。しかしながら、カメラやスイッチャーなどの放送機器間を接続するインタフェース規格「SDI」(Serial Digital Interface)の4K対応、すなわち、伝送速度12Gビット/秒対応はなかなか進んで来なかった領域だ。
1本の同軸ケーブルで4K非圧縮伝送「12G-SDI」
現状、HDビデオの非圧縮伝送が行える3Gビット/秒の「3G-SDI」を4チャンネル使用し、4Kビデオ対応を実現している。そのため、4K対応カメラからスイッチャーをつなぐには、4本の同軸ケーブルが必要であり、コネクタも各機器に4つのBCNコネクタを要する。いわば、力業で4K対応を実現してきた。
こうした状況を打破するため、SDI規格として、6Gビット/秒をサポートする「6G-SDI」と「12G-SDI」の両規格の標準化が進められており、間もなく両規格とも「仕様が固まるだろう」(MACOM)という状況にある。
伝送速度の異なる2つの規格の標準化が並行して進められているというケースはまれだ。本来であれば、4K放送を1本の同軸ケーブルで伝送できる12G-SDIのみの規格化で事足りるはずだ。にもかかわらず、6G-SDIの規格化が進められているのは、12Gビット/秒対応が技術的に難しく、4本の同軸ケーブルを2本に減らせる6G-SDIで、“急場をしのごう”というような思惑が見て取れる。実際、最終的な規格仕様が固まる直前の暫定仕様が存在する中でも、12G-SDIを実現するデバイスは、一部、リクロッカが製品化されている程度で、イコライザやケーブルドライバといったデバイスは存在しなかったという。
マインドスピード買収
その中で、2013年にマインドスピード・テクノロジーズを買収したMACOM(正式名称:M/A-COMテクノロジーソリューションズ)は、旧マインドスピードの放送機器向けインタフェースIC事業を継承し、このほど、「業界初」という12G-SDI対応のケーブルイコライザ、ケーブルドライバと、リクロッカを製品化し、2014年9月から量産をスタートすることになった。
3Gとほぼ同じサイズ/コスト
各12G-SDI対応製品は、現状の3G-SDI製品とほぼ同じチップサイズであり、「1デバイス当たりの価格は変わらない」という。例えば、ケーブルドライバの「M23328/M23428シリーズ」は、最小3×3mmサイズ。受信側に搭載するイコライザについては、「業界初でリクロッカを一体化したイコライザ」(MACOM ハイパフォーマンスアナログビジネスユニットのFernand Gonzalez氏)とし、伝送距離が長い場合などに必要だったリクロッカを外付けせずにシステムを構築できる特長がある。さらに、いずれの製品も6Gや3G、HD、SDといった旧来のSDI規格やMADIオーディオ規格のデータレートもサポートできる特長も併せ持つ。
12G-SDI対応製品を使用した12Gビット/秒でのデータ伝送デモ。白いテーブルの右上の2枚のボードがカメラなどの送信側で1本の同軸ケーブル(オレンジ色)で伝送。受信側では、イコライザを介した後、クロスポイントスイッチ搭載ボードへ伝送している。
製品先行リリースでシェアアップ狙う
MACOMの放送機器向けデバイス事業は、旧マインドスピード時代からクロスポイントスイッチ分野に強く、2013年に先行して12G-SDI対応クロスポイントスイッチを製品化した実績がある。一方で、リクロッカ、イコライザ、ケーブルドライバといったインタフェースチップセット分野は「参入が遅かったこともあり、市場をリードできているクロスポイントスイッチに比べシェアは低い」(同ビジネスユニット プロダクトマーケティングディレクターのRussell Thomas氏)という状況だ。
「今回、他社に先駆けて、12G-SDI対応チップセットを市場投入することができた。4Kビデオを1本のケーブルで伝送できる唯一のソリューションとして、クロスポイントスイッチ同様の高い市場シェア獲得を目指す」(Thomas氏)としている。
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