市販プリンタで回路を印刷! 銀ナノ粒子を使った導電性インク:東京大学発のベンチャー企業 AgIC(3/3 ページ)
東京大学発のベンチャー企業 AgICは、市販インクジェットプリンタで印刷できる導電性インクの市販を2014年夏から開始する。写真用光沢用紙や同光沢処理を施したプラスチックフィルムに自在にパターンを描くことができ、教育現場や電子工作市場、大面積基板を必要とする用途などへの拡販を展開する。
半年程度の耐久性で、使い捨て用途に特化
ただ、一般的なプリント配線板を置き換えることは、不可能だ。抵抗値が大きいことに加え、主に銀の粒子が酸化することに起因する経時劣化が避けられないためだ。ラミネート加工した場合で1年程度、ラミネート加工していない場合で半年程度が、通常使用できる目安だ。「あくまで、使い捨ての使用が前提。もっとも、紙自体が持たないだろう」と、一般的なプリント板より劣る耐久性に関しては全く意に介していない。
「プリント基板の置き換えを狙っている訳ではなく、この導電性インクでしかできない全く新しい市場を形成したい」という。その1つが、会社設立時より最初の有望市場と見込んでいる教育現場。「電気の基本を理解するのに、導電性マーカーはとても分かりやすいツール」という。
もう1つが、大面積の回路だ。「これまでA0サイズなどの大面積基板の製造は、ほぼ不可能だった領域。大判プリンタを使えば、どんな大きさの回路も作成可能。既に、静電容量式のタッチセンサー回路を仕込んだポスター広告などの応用で問い合わせもある。フレキシブル基板に至っては、通常の基板よりも大面積化が難しかったため、このインクを用いて、ロボットの皮膚センサーなどを作ることも可能になるだろう」とする。なお、AgICでは、半透明のプラスチックの表面に写真用光沢加工と同じ表面処理を行ったPETフィルムも開発、販売しフレキシブル回路用途のニーズにも対応する。
2015年売上高1億円へ
事業規模について清水氏は、「初年度である2014年は、3000万円程度の売上高を見込んでいる。既に先行サンプル品や先行受注などで1000万円程度を売り上げており見込み通り、順調に推移している。2015年は1億円、その後もその2〜3倍と、スタートアップ企業らしい成長を実現していきたい」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- フレキシブル/超薄型のタッチパネルに道、幅広い用途の透明電極に新材料登場
Cambrios Technologiesは、直径がナノオーダーの銀(Ag)ワイヤーをメッシュ状に形成し、光の透過性と導電性を両立させた透明導電インクの市場展開を本格化する。 - ライン&スペース40μmでピン間2本の配線、CMKのスーパーファインPPBU
日本シイエムケイは、大電流への対応や放熱特性に優れた車載用プリント基板を始め、スマートフォンやタブレット端末の用途に向けた「スーパーファインPPBU」などを「JPCA Show 2014」で展示した。 - カーボンナノチューブを使った「NRAM」の基本動作を実証
中央大学の竹内健教授らのグループは2014年6月12日、米国のNanteroと共同でカーボンナノチューブを用いた半導体メモリ「NRAM」に最適な書き込み方法を開発し、140nmサイズの単体素子によって基本動作を実証したと発表した。