NASAの炭素観測衛星「OCO-2」、植物の蛍光で二酸化炭素の量をマッピング:日本も技術協力(3/3 ページ)
NASAの炭素観測衛星「OCO-2」は、2014年7月1日(米国時間)に打ち上げられる予定だ。OCO-2は、植物の光合成で放出されるクロロフィル蛍光を利用して大気中の二酸化炭素の量を計測する。日本では2009年にJAXA(宇宙航空研究開発機構)が、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」を打ち上げていて、NASAはOCO-2の開発に当たり、日本にも協力を求めた。
OCO-2は、3台の高解像度の回折格子分光器で構成される観測装置を、1基搭載する予定だ。Frankenberg氏はインタビューの中で、「地域別の特徴を詳細に確認できるようになるだろう」と答えている。OCO-2は、地球観測衛星の衛星コンステレーションの一部として、極軌道の高度約705kmに投入される予定だ。
Frankenberg氏は、日本のパートナーと連携しながら、OCO-2の分光器のデータ収集/処理において使うことができる回復アルゴリズムの試験も実施したという。こうした試験の成果についても、2009年の打ち上げ失敗によってもたらされた予期せぬメリットの1つだといえる。
Frankenberg氏は、「2009年の打ち上げが成功していたとしても、当時は二酸化炭素に関するデータをどのように扱えばよいのかが全く分からない状況に陥っていたかもしれない。しかし、われわれは現在、こうしたデータの扱いを十分すぎるほど理解している」と述べる。同氏によると、OCO-2は1日当たり約10Gバイトの科学データを収集できる見込みだという。
Frankenberg氏の取り組みがなければ、クロロフィル蛍光を観測しても、その特殊性ゆえに、OCO-2の分光器に何らかのエラーをもたらす要因の1つにすぎないとみなされていたかもしれない。Basilio氏は、「それどころかわれわれは、役に立たない可能性があった物の中から、非常に役立つ物を見つけ出すことに成功した」と付け加えた。
人類が排出する二酸化炭素全体の約半分は、大気中にとどまっている。残りの半分は、海水に溶けるか、または地上の生物圏で吸収され、二酸化炭素吸収源に貯蔵されている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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