IR買収で2位東芝を引き離すインフィニオン、「相乗効果で利益率も改善する」:ビジネスニュース 企業動向
Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は東京都内で記者発表会を開催し、IR(インターナショナル・レクティファイアー)を30億米ドルで買収する件について説明した。Si/GaN/SiCパワー半導体をはじめ、製品群の拡充や製造拠点の最適化などによる利益率の改善で、2017年会計年度には利益率15%を目指す。
Infineon Technologies(インフィニオン テクノロジーズ)は2014年8月28日、東京都内で記者発表会を開催し、International Rectifier(IR:インターナショナル・レクティファイアー)の買収について説明した。両社は8月20日(ドイツ時間、米国時間)に、InfineonがIRを現金30億米ドルで買収することに合意したと発表している(関連記事)。
IRに狙いを定めた買収、2017年度には利益率15%を目指す
今回の買収は、Infineonからのアプローチで始まった。交渉を開始したのは2014年の春ごろだという。
これまでのInfineonは、2009年に有線通信事業をLantiqに売却、2010年に無線ソリューション事業部をインテルに売却するなど、どちらかといえば事業を売却する動きが目立っていた。Infineonのリージョン、セールス、マーケティング、戦略、M&A担当のArunjai Mittal氏は、InfineonのM&A方針について「常に買収の機会を探っている。当社は、エネルギー効率、モビリティ、セキュリティに対する課題の解決に注力しているが、これらに関連する技術に強い企業をピックアップし、当社の戦略や財務状況をみながら、交渉のタイミングを決めている。ただし、複数の企業に並行して買収の交渉を持ちかけることはない」と説明し、今回の買収がIRだけをターゲットにしていたことを明らかにした。
Mittal氏によれば、InfineonのEPS(1株当たりの利益)は、買収後1年目から増えると予測している。さらに、同社における利益率の増加のメドは付きつつあるという。同氏は「製品ポートフォリオの拡充、製造拠点や事業運営費(OPEX)の最適化など、買収による相乗効果は大きい。これによって利益率が改善し、買収完了から2年がたつ2017年会計年度までには、Infineonが目標とする利益率15%を達成できると見込んでいる」と述べている。
なお、両社とも日本法人を構えているが、日本法人の統合については、「買収が完了するまでは何も決められない」(Mittal氏)とした。また、日本を含む世界中の拠点における従業員の異動などについても、詳細が決定するのは買収完了後としている。
パワー半導体のシェアは、東芝を大きく引き離す
Mittal氏は、今回の買収の大きな目的は「製品/技術ポートフォリオを多様化して、より幅広い用途に対応していくこと」だと語る。それが最もよく表れているのがパワー半導体分野だ。
InfineonとIRはいずれもパワー半導体で業界をけん引する立場にいる。2012年における同市場のシェアランキングは、Infineonが1位、IRが6位だった。ただし、技術的には「完全に補完関係にある」(Mittal氏)と話す。Infineonは高電圧の製品に強く、IRは低電圧の製品群をそろえている。さらに、次世代パワー半導体についてもInfineonはSiC、IRはGaN、と異なる材料に注目して開発に力を入れてきた。
買収によって、Infineonは低電圧から高電圧までの製品ポートフォリオをそろえられるだけでなく、パワー半導体市場のシェアにおいて2位の東芝に2倍以上の差をつけて引き離す。Mittal氏は買収後のシェア目標について「明確な数値目標は明かせないが、ゆっくりでも確実にシェアアップを狙う」としてさらなるシェア向上に意欲を示した。
Infineonは、SiCの開発には長く取り組んできたが、一方でGaNに対しては慎重な姿勢をみせることもあった。これについてMittal氏は、「Si、SiC、GaNはいずれも生き残っていく技術だと考えている。システムレベルでのコストではSiが有利だし、性能面を最優先にして、かつ高耐圧が必要ならがSiC、高速スイッチングならばGaNを選択するだろう」と述べ、それぞれの素子の長所を理解した上で、「システム全体で考えたときに最も適した製品を提供していきたい」と強調した。
なお、補完関係にあるとはいえ、重複するパワー半導体製品はやはりあるので、そこについては「時間をかけて製品群を整理していく」(Mittal氏)とする。次世代パワー半導体の今後の開発ロードマップは、買収が完了した後に両社のロードマップを1つにまとめていくという。
Infineonは、300mmウエハーを使ったパワー半導体チップの生産を既に開始しているが、IRの低電圧MOSFETとIGBTの一部の製造を300mmウエハー製造拠点に移転することも可能だとしている。300mmウエハーを用いたチップの生産量が増えれば、パワー半導体製品の低価格化を加速することができる。
Mittal氏は、「日本を重要な市場として認識している」と述べ、「日本の顧客には世界中で事業を展開している企業が多い。そうした企業にとって、Si/SiC/GaNパワー半導体の製品ポートフォリオを持ち、300mmウエハーでの製造にも対応する当社が提供できるメリットは大きいと確信している」と強調した。
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