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インタビュー

ルネサス 作田CEOがM&Aを示唆――相次ぐ競合の買収ニュースに「心中穏やかではない」ルネサス 会長兼CEO 作田久男氏(2/2 ページ)

ルネサス エレクトロニクスが2014年9月2日に都内で開催した「Renesas DevCon JAPAN2014」の会場で、会長兼CEOの作田久男氏がEE Times Japanなどのインタビューに応じ、企業買収も含めて事業成長に向けた投資を行う方針を明かした。

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営業利益率は、経営/マネジメントの問題

――粗利率45%が最大の数値目標でしょうか。

作田氏 私はそう考えている。営業利益率は、経営/マネジメントの問題であり、粗利率からいくら営業利益を得られるかは、経営の責任だ。

――粗利率の低い製品のEOL(End of Life:生産中止)を進められていますが、進み具合はどの程度でしょうか。

作田氏 顧客と大きな食い違いがなく進んでいる。EOLで問題となるのは、今後1000万個の半導体が必要になるといった場合でも、その1000万個で足りなくなると(ユーザーが最終製品を)生産できなくなるため、余分に100万個作っておくというようなバッファの議論だ。この(不良在庫になる恐れの強い)バッファ分を誰がどのように持つかが難しいがこの議論も終えつつある状況だ。

 こうしたEOLの実施によるプロダクトミックスの変化は(粗利率45%達成をめざす)2016年度には効いてくるだろう。

“逃げた結果、やらない”というのはダメ

――中国市場など新興国向けのエアコンや冷蔵庫用のインバータ制御関連デバイスなども注力される方針ですがが、相当、激しい価格競争があり、粗利率も低いように思えますが。

作田氏 中国にはこれから成長する4大マーケットというのがありその1つがエアコンだ。少し矛盾するかもしれないが、個人的にはこうした大きな成長が見込める市場はやらなければならないと思う。“逃げた結果、やらない”というのはダメで、“挑戦して、その結果やらない”は良い。

 単純なボリュームゲームには間違っても首を突っ込まないが、競合が粗利を確保しながら安い価格設定ができて、ルネサスができないはずはない。人件費が高ければ、安いところへ行けばいい。

 デバイス(の回路構成)は、70%はコモン(=汎用的な回路)で、20%はモジュール(=開発済み回路の組み合わせ)、10%はオプション(=顧客ごとのカスタム回路)だと思っている。しかし、ルネサスはこれまで(コストの掛かる)オプションの比率が高く、100%というような場合も多かったように見受けられた。競合が、従来製品のごく一部を変えただけで新製品とうたっているのとは対象的だ。

 (顧客に対する)文書の書き方1つでもオプションが多く、共通化できる部分は多い。

これからはR&Dに集中

――構造改革、プロダクトミックスの見直しもメドが付きつつありますが、今後の取り組みはどのようなものになりますか。

作田氏 これからはR&D(研究開発)に集中していく。

――R&D投資の方向性をお聞かせください。

作田氏 経済産業省や(大株主である)産業革新機構、時には銀行に対する説明資料として1枚の紙を用意している。そこには横軸に(注力する)分野やアプリを、縦軸にはコア技術を置いた図を用意している。コア技術には、大きく2つあり、「ルネサスが持っている技術」と、「必要があるがルネサスの持っていない技術」がある。もちろん、持っていない技術は、全て自前で開発するわけには、いかないので、(事業や企業、IPを)買うか、(他社と)コラボレーションする必要がある。

 もちろん持っている技術でも、足りているのかどうかも検討している。例えば、セキュリティだ。ルネサスには、デバイス内のセキュリティの技術は豊富にある。しかし、今後IoT(モノのインターネット)でつながった時のデバイス外のセキュリティ技術は、誰もやっていない技術であり、コラボレーションや買収の必要性があるだろう。マイコンのコンピューティングの部分については自前で開発していく。

心中穏やかではない

――いつごろ、どのような投資を行うのですか?

作田氏 多くの事案があり、それぞれで投資を行うタイミングも違う。「可及的に行うべきもの」「速やかに行いたいもの」「ゆっくりでもよいもの」の3つのタイプがある。投資が必要な案件は、数多くある。優先順位は、ROI(費用対効果)で単純に判断できないので、競争力を十分に見定めて行いたい。買収は、顧客が嫌がる買収と、そうでない買収がある。顧客の嫌がる買収とは、サプライヤーが1社になるタイプの買収。もしかすると、顧客の嫌がるM&Aの方が効果があるのかもしれないと思っている。

 競合の買収ニュースが相次ぐ中で、心中穏やかではないのも事実。けれど、焦って誤った投資を行うわけにもいかない。

次世代プロセスは2社以上に委託

――90nmプロセス、40nmプロセスは、那珂工場(茨城県)の自社生産と台湾TSMCへの外部委託製造を並行されていますが、今後の28nmプロセス対応など製造設備への投資はいかがですか?

作田氏 開発については、ルネサス内で行うが、(製造など)実行はルネサス以外でも構わないと考えている。ただ、東日本大震災以降、ルネサスはデュアルファブ(2工場以上での生産)体制を敷いており、2カ所以上への委託にしたい。できれば、台湾のA社の2工場への委託よりも、台湾A社と台湾B社への委託が理想だ。

――足元、車載マイコンの需要は旺盛で、生産がひっ迫しているようですが。

作田氏 車載マイコンの需要は好調だ。現在量産しているマイコンの多くは、外部委託前の130nmや180nmプロセスを使った製品であり、自社製造で対応する必要がある。そのため自社製造拠点でスループットを上げる努力や小規模な投資での増産を行っている。ただ、従来のように100億円などというような規模の投資は絶対に行わない。

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