中国テレビメーカーの猛追に、サムスン/LGが戦略を変更:韓国メディア「ETnews」による「IFA 2014」リポート
2014年9月5〜10日にドイツ・ベルリンで開催された展示会「IFA 2014」では、中国TCLが次世代型の液晶テレビとされる量子ドットテレビを公開し、話題となった。世界シェアでトップを争うサムスン電子、LG電子にも少なからず、影響を与えたようだ。サムスン電子、LG電子の地元・韓国のIT/エレクトロニクス関連メディア「ETnews」が伝えたIFA 2014でのテレビに関するリポート記事を紹介する。
量子ドットテレビも有機ELテレビも全て準備万端です。まずは量子ドットテレビに集中した後、OLEDを出していく予定です――ハイセンスジャパン CEO ヴィヴィアン・リー氏。
中国企業が目に見えて追い付いてきました。我が社より先に挑戦する姿勢は驚くべきことですね――LG電子テレビ担当研究員。
これらは民生エレクトロニクス展「IFA 2014」(ドイツ・ベルリン/会期:2014年9月5〜10日)の展示現場から聞こえてきた声である。中国のテレビメーカーの成長が著しい。これまでのような「コピー(模倣)」だけでなく、技術的にかなり向上してきた。
コピーにとどまらない中国勢
サムスン電子テレビ事業部担当のある役員は、IFA 2014に目立った新製品を公開しなかった理由の1つとして、“中国企業による模倣”を挙げた。IFAで製品を公開すると、4カ月後にアメリカ・ラスベガスで開催される展示会「CES」に、中国企業がそのまま模倣製品を持って現れるからというのだ。業界では、IFAよりもCESがより重視される傾向にある。
これまでは、中国企業の出すものは単純な模倣製品だったため「粗悪なレベル」と韓国国内では酷評されていたが、今ではそのレベルが格段に上昇してきた。“韓国勢とは2〜3年分の技術格差がある”という声も、当然のように聞こえてこなかった。それでもLG電子テレビ事業部のある研究員は、中国勢のテレビに対して「相変らず韓国勢のテレビをかなり模倣している」とし、「問題は(中国勢が)価格を大幅に下げて販売を始めること」だと憂慮した。
韓国勢に先駆けて量子ドットテレビを公開した中国勢
実際に今回のIFA 2014で、韓国企業があっと驚くようなテレビの新製品をお披露目しない反面、中国のTCLとハイセンスは、韓国企業と似た製品ラインアップをそろえるだけでなく、より進化した量子ドットテレビを公開した。その様子は、世界シェアで1、2位を争うサムスン電子やLG電子にほとんど肩を並べたかのような自信を感じさせるものだった。TCLで海外製品企画部プロダクトマネージャーを務めるフェン・ジャン氏は、「2014年12月に量子ドットテレビを中国で公開した後、2015年1〜3月期には欧州で製品を発売していく予定」とし、「価格は未定だが、有機ELテレビより価格は安い」と話した。ハイセンス関係者も「2015年の4〜6月には、中国を皮切りに量子ドットテレビを市場投入する予定だ」と明らかにした。
LGが先行する有機EL テレビについても、TCLやハイセンスなど大部分の中国企業が製品を公開していた。
曲面液晶テレビを中国勢のブースで探すことも難しくなかった。曲面/平面の可変型テレビも中国勢ブースで目にすることができた。なかでもTCLは、世界最大の4K対応曲面テレビを公開して、技術的優位を誇っていた。まだ画質面においては、韓国勢のテレビと比べると明らかに落ちるように見えるが、110インチの製品に挑戦したという面では韓国の専門家たちも「認めなければならない」という反応だ。
サムスン幹部、ソニーのテレビ事業は「大きな収益回復を見せるのでは」
日本のテレビメーカーに対しては多少視線が交錯する。2014年7月、分社化とともに組職を大幅に縮小したソニ− テレビ事業部門(ソニ−ビジュアルプロダクツ)の4K対応曲面テレビについては、画質や音質、デザインなどでレベルが上昇したという評価がなされた。サムスン電子の幹部は「分社化を経て大幅な人員削減を行ったことで、大きな収益回復を見せるのでは」と予測している。一方で、パナソニックと東芝に対しては憂慮の声が聞こえた。「中国企業の低価格戦略との競争で生き残りが難しい」という反応である。
サムスン電子は曲面(可変型)4K対応テレビ、LG電子は4K対応有機ELテレビを主力として展示する中、98インチサイズの8K対応テレビが関心を集めた。サムスン電子は公式な発売または販売開始を公表しなかったが、一方のLG電子は2015年に発売を開始する予定だ。
「誰が初めなのかが重要ではない」(サムスン)
一方、中国企業の猛追を受けて、韓国企業は新製品発売に向けて速度を調節していくようだ。サムスン電子社長のユン・ブグン氏は、「誰が初めなのかが重要ではなく、消費者が購買できる適切なタイミングで製品を出すのが重要だ」とし、「世界初公開」という形式にとらわれないという意志を明かした。LG電子関係者も「訳もなく『一番乗り』を争うと、ライバル社を刺激するだけではなく、消費者が必要ともしない技術を開発するようになってしまう」とし、「これからは実質的に消費者が満足できる製品にフォーカスを当てていきたい」と話した。
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【翻訳/編集:EE Times Japan】
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