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目を超えたイメージセンサー、人間と同じ物体認識ができるステレオカメラ……“コンピュータビジョン”の可能性DMP Computer Visionセミナーリポート(3/4 ページ)

ディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)主催のセミナー「DMP Computer Visionセミナー2014」の基調講演に、ステレオカメラ「アイサイト」の開発者として知られる東京工業大学放射線総合センター准教授の実吉敬二氏が登壇した。本稿では、実吉氏らの講演を中心に、同セミナーの模様を紹介する。

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ソニーが挑んだ“3つの技術”

 1つ目がカラムA-D変換回路を搭載した製品「Exmor」である。アナログ信号の伝送路が長くなるとノイズの影響を受けやすくなる。Exmorは、列ごとにA-Dコンバータを用意し、同時に取り込んだアナログ信号をデジタル信号に一括して変換する。この時、A-Dコンバータの前段と後段の2か所でノイズを除去する仕組みとなっている。また、「上下2行同時読み出し」や「下位ビットのカウンタを複数カラムで共有」、「高速で低消費電力のインタフェース」といった高速撮像技術と組み合わせることで、34.8Gビット/秒のデータ出力で、17.7Mピクセル、120フレーム/秒の読み出しを可能とした。


一般的なCMOSイメージセンサーの回路構成とカラムA-D変換回路を搭載した製品「Exmor」の回路構成 (クリックで拡大) 出典:ソニー

裏面照射

 2つ目の技術は、裏面照射型CMOSイメージセンサー「Exmor R」である。一般的な表面照射型CMOSイメージセンサーの構造は、入射光側から見てオンチップレンズやカラーフィルタの下に配線層があり、その下にフォトダイオードが作り込まれている。これに対して裏面照射型のExmor Rは、オンチップレンズやカラーフィルタのすぐ下にフォトダイオードを設け、その下が配線層という構造になっている。この構造とすることで、高速/低ノイズで、高感度を実現している。「STARVIS(State-of-the-Art High Sensitivity Technology)」と呼ぶ高感度技術により、「月明かりの環境でも撮影が可能となった」という。

表面照射型と裏面照射型CMOSイメージセンサー「Exmor R」の構造の違い(左)、従来製品と高感度化技術を採用したExmor R製品との撮影画像の比較(右) (クリックで拡大) 出典:ソニー

積層

 3つ目の技術は、積層型CMOSイメージセンサー「Exmor RS」である。Exmor Rで支持基板として用いていた部分にロジック回路を集積した構造となっている。これによって、「イメージセンサーモジュールの小型化が可能」、「支持基板を有効活用できる」、「イメージセンサー部とロジック部の製造プロセスを分離、最適化することができる」といったメリットがあるという。HDR(High Dynamic Range)を実現する「HDR Movie」機能を備えたExmor RSでは、逆光での撮影でも黒つぶれや白とびの少ない映像を得ることができる。

 さらに、イメージセンサー部はより感度を高め、欠陥を減らすための設計やプロセス開発などが行える。一方で、ロジック部については最先端プロセスを導入した外部ファブを活用して設計、製造することもできる。本橋氏は、「イメージセンサー事業を展開していく上で、センサー部とロジック部を分離して製造できることは、新たなビジネスモデルとなる」と話した。

左は表面照射型、裏面照射型、積層型のイメージセンサー構造比較図、右は一般的なCMOSイメージセンサーによる画像とHDR Movie機能を備えたExmor RS画像の例 (クリックで拡大) 出典:ソニー

 この他、被写体が高速で動作している場合、CMOSイメージセンサーで撮影した場合に画像がゆがむこともある。こうした課題を解決するグローバルシャッタ技術も簡単に紹介した。FAや産業用途向けに提案している。

 最後に、CMOSイメージセンサーの開発ターゲットとして、「速度」(速すぎて見えない)、「感度」(暗すぎて見えない)、「ダイナミックレンジ」(明暗差があり過ぎて見えない)、「視野」(広すぎて見えない)、「距離」(遠すぎて見えない)といった人間の眼の限界に対して、「こうした限界の壁を超えるイメージセンサー技術を開発していくことで、人々に感動を与えるデジタルイメージングの世界を創出していきたい」と語った。

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