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IBMが人工知能「Watson」事業部の本部を開設、世界規模で活用の推進へビッグデータの利用をさらに加速(2/2 ページ)

IBMが人工知能「Watson(ワトソン)」を専門に扱う事業部Watson Groupの本部をニューヨークに開設した。Watsonは、研究開発、教育、医療、小売業、旅行/観光業など、さまざまな分野で既に活用が進んでいるが、今後はそれがさらに加速されるだろう。

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「Watson」活用の分野が拡大

 Watsonの成功によって、新たな分野で事業拡大を狙う企業家も、コグニティブコンピューティングの可能性を確信するようになった。例えば、オンライントラベルサービスのTravelocityの創業者で、KAYAKの初代会長でもあるTerry Jones氏は、Watsonを活用したトラベルサイト「WayBlazer」の2015年開設に向けて準備を進めているという。米国テキサス州オースティンの観光局Austin Convention & VisitorsBureauは、WayBlazerのベータ版を運用して、Watsonの学習機能や、自然言語インタフェースによる映像を交えたアドバイス機能を検証している。WayBlazerの導入によって、ホテルの予約数や、パートナー企業/アフィリエイトプログラムからの収益を増やしたい考えだ。


TravelocityのTerry Jones氏 出典:Paul Zalewski for IBM

 IBMは、世界5都市に開設するWatson Client Experience Centerに、同社のResearch and Designチームも併設する計画だ。同センターでは、Watsonをベースとしたコグニティブコンピューティングアプリケーションの実現に必要なサポートやスキルを提供していくという。

 Watsonがクイズ番組「Jeopardy!」で人間のチャンピオンに勝利して以来、Watsonの質疑応答エンジンコアは医療や小売業など、さまざまな分野で採用されるようになった。IBMは、「Jeopardy!」以降の3年間、Watsonの性能向上と小型化に取り組み、標準的な10フルラックから1ラック1スロットにまで縮小した。こうした成果によって、Watsonの採用が世界規模で進んでいる。

 オーストラリアのANZ Global Wealth銀行は2014年11月に、「Watson Engagement Advisor」ツールをベースとしたアプリケーションを発表する予定だという。同銀行の400人を超えるファイナンシャルプランナーは、このアプリケーションを活用することで、これまでは作成に数週間を要していた財務アドバイス報告書を、わずか1セッションで作成してクライアントに届けられるようになる。

 南アフリカの医療保険会社Metropolitan Healthは、より的確な医療情報の提供に向けて、Watson Engagement Advisorを導入するという。健康やライフスタイルに関する情報は増え続けている。保険代理店はWatsonを活用することで、膨大な非構造化データの中から、300万人の顧客の個々のニーズに対応した情報を提供できるようになる。カナダのLifeLearnは、Watsonを活用して、人間を診察する医師へのアドバイスと同じように獣医師にアドバイスを提供する。

 Watsonの最も革新的な活用例として、オーストラリアのDeakin University(ディーキン大学)の事例がある。同大学は、学生へのアドバイスの提供にWatsonを活用する計画だ。Watsonを活用した学生アドバイザーアプリケーションで、素朴な質問から複雑な問題に至るまで、5万人の学生一人一人に対応したアドバイスをWeb上で行う。「この課程を履修するには、どんな手続きが必要ですか?」といった簡単な質問は、大学のマニュアルやパンフレット、運営方針の中から毎日24時間回答する。キャリア選択などの複雑な質問に対しては、通常の学生アドバイザーが学生のスキルや能力に応じたアドバイスを行うが、Watsonを活用することでより迅速にアドバイスできるだけでなく、Watsonによって新たな選択肢が導き出される可能性もある。

 この他、英国のRed Antも、製品情報やマニュアル、カスタマーレビューを集約して、購買層や購買履歴、ターゲット価格などを分析するためにWatsonを活用している。こうした分析により、販売員が顧客の購買傾向を把握する支援を行っている。

 米国のReflexisは、Watsonを活用して、店舗マネジャーに対してリアルタイムに注意を促したり、実践的な行動指針を示したりすることで、優れた顧客体験の提供に役立てている。

【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】

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