パナソニック、中期計画を1年前倒し達成へ――10兆円企業に向け準備整う:ビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)
パナソニックは2014年10月31日、2014年度(2015年3月期)の業績見通しを上方修正し、中期計画で2015年達成を目指していた営業利益3500億円を、1年前倒して今年度に達成する見通しとなったと公表した。2015年度からは「成長に向けた戦略投資を行う」(社長 津賀一宏氏)と構造改革から成長戦略へ軸足を移すことを明言した。
7つの赤字課題事業が4つに
中期計画スタート当初、5事業あり、2014年度にエアコンとデジタルスチルカメラ(DSC)の2事業を加えた赤字課題7事業は「現状は、光ドライブ、テレビ、ディスプレイパネル、半導体の4つが赤字課題事業という認識」とし、2014年度は43事業部のうち38事業で営業黒字、さらにそのうち18事業は営業利益率5%以上を達成する見通しとなった。
残る4つの赤字課題事業については、「まだ構造改革の最中」として改善に取り組む。テレビ事業については、「営業利益率5%以上は出せない事業であり、(損益ゼロの)“白字化”をめざす」とした。
半導体事業は、既にシステムLSI部門の切り離し(関連記事:富士通とパナがシステムLSI事業統合を正式発表、ファブレス新会社を設立へ)が決定しているものの、「最も固定費の重たい事業」と言及。一方で、「粘り強くやっていくと腹をくくっている。産業や車載用途で技術的にリードするための半導体は手の内に残しておく」とした。
光ドライブについては、市場が縮小しているため、技術者の配置転換などを行いながら徐々に終息させていく見通し。パネル事業については「32インチ液晶パネルなど利益を生める競争力がある」と収益改善の道筋は付きつつある状況とした。
2015年度以降は“成長投資”を加速
中期計画の数値目標を1年前倒しで達成する見通しとなった上、課題事業の道筋もハッキリと見えつつある中、パナソニックは“構造改革”から“成長投資”へ大きく舵を切る。
パナソニックは以前から、2013〜2015年度中期計画後は成長に向けた戦略投資を実施し、2018年度に売上高10兆円の達成を目指すとしてきた。今回、中期計画の1年前倒し達成に見通しがついたことから「2015年度から本格的に成長に向けた戦略投資を行う。売上高10兆円の達成には、既存事業の有機的成長だけでは届かないと思っている」と、事業買収など含めた積極的な投資を行う姿勢を明確にした。
具体的な投資先などについて津賀氏は明言を避けたが、2018年度に向け「カーエレに強い会社、住宅を重点分野とする会社、B2B事業の骨格のある会社を目指す」とし、3分野への積極投資を示唆。車載事業における投資方針ついては、「インフォテインメント、電池、ADAS(先進運転支援システム)の3つの領域に注力する。インフォテインメントは既に発表したフィコサとの資本業務提携などにより今後大きく伸びるだろう。電池についてもテスラモーターズと協業し、大規模リチウムイオン電池工場を設立し、需要を見ながら自社で投資していく。ADASに関しては、ティア1との協業が不可欠」と語った。
2018年度に向けた数値目標については、「営業利益率5%以上は維持したいとは思うが、まずは売上高10兆円を目指す」とし規模拡大への意欲を示した。
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