ビッグデータ時代の今、データサイエンティストの不足にどう対応すべきか:ビジネスニュース 業界動向
ビッグデータ時代が到来しつつある今、膨大なデータを分析、活用する人材であるデータサイエンティストの不足が顕著になりつつある。数年後には、米国だけでも10万人以上のデータサイエンティストが不足するとされる中で、業界関係者がこの問題にどう対処すべきかを議論した。
2018年に米国で14万人以上が不足か
ビッグデータの時代を迎えた今、米国はデータサイエンティストの不足に直面している――。
2014年11月4〜6日に米国テキサス州オースティンで開催された年次イベント「Dell World 2014」に参加したパネリストは、「データ分析の活用事例は増えているが、膨大な情報の中から有益な洞察を導き出すことのできる人材を見つけるのは非常に困難だ」と述べていた。
Dellの分析部門でエグゼクティブディレクタを務めるTom Hill氏は、パネルディスカッションで、「多種多様で膨大なリアルタイムデータから洞察や知見を導き出すことのできる人材の確保が、ビッグデータを活用する上でのボトルネックになっている。統計学や機械学習、可視化、新手法の考案といった総合的なスキルを備えた人材は少ない」と語った。
Hill氏によると、「米国では2018年に、データサイエンティストが14万〜18万人不足すると予想される」という。
万能な人材よりもツールで
米国のビジネス誌 Fortuneの編集長で、パネルディスカッションの議長を務めたGeoff Colvin氏は、「データ分析における主要課題はもはや、データを手に入れることではない」と語る一方で、「データ分析の訓練を受けていない人材に対して、過度な期待をし過ぎていないだろうか」と疑問を投げ掛けた。
米国のコンサルティング会社McKinsey & Companyの研究部門であるMcKinsey Global Instituteでパートナーを務めるMichael Chui氏は、「データサイエンティストは、“ユニコーン”のような存在だ。さまざまな動物の特徴を備えたユニコーンのように、多彩なスキルを有するスペシャリストであることが求められる、非常に過酷な職だ。業界では現在、ビジネスアナリストに対して、データを駆使して企業の多様な思惑に対応することを課している。だが、データサイエンスはこうしたいくつものスキルを備える“ユニコーン的な要素”を排し、ビジネスアナリストが操作できるツールによって合理的に行われるべきだ」と語った。
データ分析用ソフトウェアの開発を手掛ける米国のPalantirでプレジデントを務めるShyam Sankar氏は、「データサイエンティストはビジネスについて熟知した上で、データ分析に適した課題を見つけ出さなければならない。企業がビッグデータを活用するには、こうした創造的な連携がキーとなる」と指摘する。
ビッグデータ活用に向けたプラットフォームを提供する米国のClouderaでCEO(最高経営責任者)を務めるTom Reilly氏は、「これは、ITの問題でもビジネスの問題でもない。ITとビジネスの連携が必要な問題だ。この両方が揃わなければ成功はない」と述べた。
その一方で、分析システムをもっと使いやすいものにすることも必要だ。
Reilly氏は、「1万モジュールもあるような分析システムでは、それを管理するために十分な数のデータサイエンティストを雇うことは不可能だ。モジュールの構築やキャリブレーション、テスト、検出といった工程は、ある程度、自動的に行う必要がある。これはわれわれに課された課題であり、人的ボトルネックを解消する有効な手段でもある」と述べている。
教育も必要
業界は、ビジネスリーダーやアナリストがより快適にデータサイエンスを行える支援ツールを作成する義務がある。McKinseyのChui氏はこれとは別に、長年感じてきたこととして、次のような意見を述べた。
「われわれは皆、スキルアップしていかなければならない。米国で教えられる機会が少ない微積分学や慣習的な統計を教えていくべきだろう」。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
関連キーワード
データサイエンティスト | ビッグデータ | 人材 | スキル | 業界動向(エレクトロニクス) | パネルディスカッション | 統計 | キャリブレーション | コンサルティング | ディレクター | ビジネスニュース(EE Times Japan) | 経営 | プラットフォーム | スキルアップ | 支援
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ビッグデータは“重ねて”見てこそ価値がある、NHK技研の可視化システム
NHK技術研究所は「技研公開2014」で、ビッグデータをリアルタイムで可視化するシステムを展示した。天気の情報、ホテルや避難所の位置、道路の混雑情報などを同時に表示できる。さまざまなビッグデータを重ね合わせて見ることで、本当に価値のある情報を提供できると強調する。 - IoTとビッグデータでストレージ要件は変わる?
モノのインターネット(IoT)は、大量のデータが生成される世界だ。あらゆる端末から集められたデータは、ストレージ要件にどう影響するのだろうか。 - AI活用の本命はビッグデータなのか?
人工知能(AI)は、登場初期の黄金期と、1980年代前半のブームを除き、長く「冬の時代」が続いてきた。だがここに来て、ようやくAIが本領を発揮できそうな分野が登場している。それが、クラウドやソーシャルメディア、スマートフォンなどのモバイル端末の普及により、にわかに注目を集めるようになったビッグデータだ。