“空飛ぶ電波塔”、無人飛行機を中継回線代わりに:被災地でも実証実験
情報通信研究機構(NICT)は、小型の無人航空機を用いた無線通信システムを「NICTオープンハウス2014」で紹介した。航空機に小型の中継装置を搭載し、ネットワークが孤立した地域の地上局と、ネットワークが生存している地域の地上局を結ぶ。農業や野生生物の分布調査にも使われている。
情報通信研究機構(NICT)は、最新の研究成果を発表する「NICTオープンハウス2014」(2014年11月27〜28日)で、小型無人航空機を用いた無線通信システムを紹介した。
翼長2.8m、重さ6kgほどの無人航空機に小型の中継装置(以下、機上局)を搭載する。それを介して、災害などでネットワークが孤立した地域と、ネットワークが生存している地域の中継用地上局を結ぶ仕組みだ。地上局と機上局の通信には2GHz帯を利用している。
小型無人航空機を用いた無線通信システムの概念図。ネットワークが孤立した地域の地上局を、臨時に設置したWi-FiアクセスポイントにLANで接続すると、その地域の人たちがWi-Fiを使って通信を行えるようになる。無人航空機の操作については、常に別の回線が必要になる(クリックで拡大)
現時点での送信出力は2W、通信速度は450kビット/秒(kbps)。地上局と機上局の通信距離は20km。通信速度については5Mビット/秒を目指すとしている。NICTの説明員によると、通信速度を上げる方法として複数の無人飛行機を並行して飛ばすことを考えているという。
宮城県では2013年に、このシステムを使った実証実験が行われている。
被災地での無線通信システム実現の他、農業や、野生動物の分布調査などにも応用され始めている。北海道芽室町では、無人航空機にカメラを搭載して畑の様子を観察するとともに、畑に設置したセンサーの情報を収集する実験が行われている。福島県富岡町(居住制限区域)では、野生のイノシシの分布調査に無人航空機が使われている。イノシシにつけたセンサーから、位置情報や放射線量などのデータを無線(150MHz帯を使用)で航空機に送信し、そこから、データをモニタリングしている地上局に送っている。無人航空機1機で、地上制御局を中心とした直径20kmの範囲をカバーできるという。
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