CypressとSpansion統合――Cypressの名が残り、マイコンはシェア9位か:ビジネスニュース 業界動向
経営統合することで合意を発表したCypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)とSpansion(スパンション)。これにより、マイコン、特に車載マイコンの勢力図に若干の変化が生じる。
Cypressの名が残る
また1つ、半導体メーカー統合の一報が入った。
2014年12月1日(米国時間)、Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)とSpansion(スパンション)が経営統合に合意したと発表したのだ(関連記事)。両社は、統合後の売上高見込みを20億米ドルとしている。半分はNOR型フラッシュメモリとSRAM、もう半分はマイコンとアナログICが占める。
統合後はCypressの名が残るようだ。Cypressの現CEOであるT.J. Rodgers氏がCEOを務める。CypressはSpansionよりもメーカーとしての規模は小さいが安定した利益を出している。一方でSpansionは、中核事業であるNORフラッシュの売り上げが減少していることもあり、やや不調だ。
車載マイコンではランクが上位に
統合後は、半導体チップメーカー上位20社(売上高ベース)に食い込むまではいかない。それには現在の2倍の売上高が必要になるからだ。だが、自動車メーカーへのサプライヤとしては世界第4位あるいは第5位となる見込みである。車載マイコン市場では第8位、全体のマイコン市場では第9位になるとされる。
IHSの主席アナリストであるTom Hackenberg氏によれば、2013年におけるマイコンの売上高では、Cypressは12位、Spansionは10位にランクインしているという。「おそらく統合後は、現在9位のSamsung Electronicsを抜いて、Atmelの後ろにつくことになるだろう。Atmelとの年間売上高(マイコン分野での)の差は2億米ドル以下となる見込みだ」(同氏)。
Cypressは、プログラマブルSoC「PSoC」を展開している。一方のSpansionは、2013年4月に富士通セミコンダクターのマイコン/アナログ事業を買収してマイコン市場に参入した。
CypressのPSoC事業を統括するHassane El Khoury氏は、「両社のマイコン製品群には重複がほとんどない」と述べている。「車載マイコンでは、Spansionは自動車のバックエンドに関わる部分を扱っている。それに対してわれわれが手掛けているのはフロントパネルのHMI(Human Machine Interface)の部分だ。白物家電でも同じことがいえる。Spansionはメインボードのコントローラ、Cypressはフロントパネルを手掛ける。両社は、顧客、技術、用途の全てにおいて補完関係にあるのだ」(同氏)。
メモリでいえばCypressはSRAMを手掛けていて、SpansionはNORフラッシュを中心に、SK Hynixと提携したSLC(Single Level Cell) NAND型フラッシュメモリの展開にも力を入れてきた。
両社は、統合後の3年間で、年間1億3500万米ドルのコストを削減できると発表している。ただし、そのコスト削減のうち、どれだけが人員削減に関わるものかについては言及していない。今回の取引は2015年前半に完了する見込みだが、おそらく中国の規制当局から承認を得ることが最難関となるだろう。
両社ともM&Aの機会を探していた
競争力の向上と経営の効率化のため、買収や統合が進む半導体業界。ちょうど1年前となる2013年12月には、アバゴ・テクノロジー(Avago Technologies)が、LSI Corporationを66億米ドルで買収すると発表している。2014年1月には、既にMicron Technologyによる買収が完了していたエルピーダメモリが、「マイクロンメモリジャパン」に社名を変更している。
CypressでCTO(Chief Technology Officer)を務めるAugusto de Olivera氏は、「話は単純だ」と述べる。「CypressもSpansionも、積極的にM&Aの機会を探していた。Cypressは2012年にFRAMメーカーのRamtron(ラムトロン)を買収している。それ以降も、より大きなM&Aを求めていた。一方でSpansionもM&Aの機会を探していて、そこで両社が出会い話を進めることになった」(同氏)。
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