5Gシステムの設計フローを統合、試作/検証期間を従来の半分に短縮:テスト/計測 モジュール式計測器
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は、5Gなど次世代無線通信システム開発向けソフトウェア「LabVIEW Communications System Design Suite」(以下、LabVIEW Communications)を発表した。次世代無線通信システムの試作/開発期間を大幅に短縮することができる。
日本ナショナルインスツルメンツ(日本NI)は2014年12月11日、5G(第5世代移動通信)など次世代無線通信システム開発向けソフトウェア「LabVIEW Communications System Design Suite」(以下、LabVIEW Communications)を発表した。同社のソフトウェア無線(SDR)ハードウェアと組み合わせると、次世代無線通信システムのアルゴリズム開発から試作、評価まで設計フローを統合でき、開発の期間を大幅に短縮することができるという。
LabVIEW Communicationsは、ソフトウェア無線(SDR)に特化したソフトウェア開発環境である。「ハードウェア・アウェア」と呼ばれる概念をサポートしているのが特長だ。この機能によって、開発ツール上にハードウェアの構成やその役割、システムドキュメントなどの情報がブロックとして表示され、ハードウェアの動作をソフトウェアで定義することができるという。C言語やMATLABで記述されたアルゴリズムを、容易にFPGAに実装することが可能となる。また、「LTE(Long Term Evolution)」や「Wi-Fi」などの無線通信用IPが用意されているため、試作機の開発と検証の効率を高めることができる。
LabVIEW Communicationsでは、アルゴリズムをFPGAに実装する方法も新たに追加している。「マルチレートダイアグラム」と呼ぶプログラム手法である。従来からサポートしている「FPGA IP」や「クロック駆動型ロジック」にも対応している。
開発ツールの分断を防ぐ
同社製SDRハードウェアである「NI USRP RIO」あるいは「NI Flex RIO」と組み合わせることで、次世代無線通信システムのコンセプトから試作までの開発工程を1つのソフトウェアで統合することが可能となる。これまでは、研究チームがアルゴリズムの開発を担当し、システム設計チームがシステムのマッピングを行い、実装チームがシステムの実装を担当するなど、工程によって開発チームと、そこで用いる開発ツールが分断されていることが多かった。これに対して、LabVIEW Communicationsベースの開発環境はシミュレーションからマッピング、実装まで共通したツールを用いることで、設計フローを統合することが可能となった。LabVIEW Communicationsの価格(税別)は39万6000円より。
LabVIEW Communicationsの開発に協力してきたノキアによれば、ミリ波通信システムの試作/評価にSDRプラットフォームを活用したところ、「試作に要した期間はほぼ1年で、他のツールを用いて同様のプロジェクトを行った場合に比べて、半分以下に短縮することができた」と話す。
5G通信に向けて
日本NIの代表取締役を務める池田亮太氏は、「2020年までに500億台の機器がネットワークに接続されると予想されている。このためネットワーク容量の不足が懸念されており、5Gの必要性が高まっている」と話す。
5Gは「通信容量をLTEの1000倍とする」といった開発目標が業界の共通認識となっているが、それを具現化するための技術はまだ固まっていない。これを実現していくための方向として、変調方式や使用する周波数帯、大規模MIMOシステム、アクセスポイントの密度、などいくつかの技術が検討されており、これらの技術をどのように組み合わせて必要となる通信容量を達成していくか、が共通課題になっているという。NIのSDRプラットフォームは、こうした次世代無線通信システムの試作や検証を短期間で行えるツールとして提案してく。
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