ルネサス、2015年度内にSOTB採用マイコンを製品化へ――消費電力1/10以下、0.4V駆動品も可能に:プロセッサ/マイコン(1/2 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2015年度(2016年3月期)中にも新型トランジスタプロセス技術「薄型BOX-SOI(SOTB:Silicon-on-Thin-Buried Oxide)」を用いたマイコンを製品化する。同技術を用いることで、0.4Vという超低電圧駆動のマイコンが実現できるという。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2015年度(2016年3月期)中にも新型トランジスタプロセス技術「薄型BOX-SOI(SOTB:Silicon on Thin Buried Oxide)」を用いたマイコンを製品化する方針で開発を行っていることを明らかにした。SOTB従来のマイコンよりも消費電力を1/10以下に低減する0.4V駆動マイコンなどが実現できるという。
SOTBは、完全空乏型Silicon on Insulator(FD-SOI)と呼ばれる絶縁膜上に薄膜シリコンを積層する基板構造の1種だ。FD-SOIは、リーク電流やトランジスタの動作速度を遅らせる原因の1つとなる浮遊容量を低減できる技術。また、BOX(Buried Oxide)層と呼ばれる絶縁膜を薄型化することで、トランジスタ間のしきい値電圧ばらつきを低減する基板バイアス制御が行え、トランジスタの駆動電圧を低減できるなどの特長も持つ。既にSTマイクロエレクトロニクスがFD-SOIを用いて28nm LSIの製造を行っている。
フラッシュなどと混載が可能
SOTBは、FD-SOIの中でもBOX層を10nm程度まで薄化する技術で、よりトランジスタ特性のバラツキを低減できる技術。さらにBOX層の薄化効果により、SOTBを用いたトランジスタと隣接して、SOTBを用いずバルクシリコン上に直接、高電圧駆動が要求されるI/O回路用トランジスタやフラッシュメモリなどの素子を形成、混載できる利点がある。「従来のFD-SOIでは、BOX層の厚みが80nm以上あり、その厚みがネックとなって、SOTBとバルクのハイブリッド構造は実現しにくかった。だがSOTBであれば、フラッシュメモリ部とロジック部の駆動電圧は異なるものの、フラッシュメモリ内蔵マイコンも実現できる」(ルネサス)とする。
2015年1月にルネサスが実施したプライベートイベント「DevCon JAPAN in OSAKA」の基調講演で紹介されたSOTBに関する説明資料 (クリックで拡大) 出典:ルネサス エレクトロニクス
ルネサスは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から業務委託を受ける超低電圧デバイス技術研究組合(LEAP)のメンバーとしてSOTBの開発プロジェクトに参画。マイコンの主力工場の1つ那珂工場(茨城県)の300mmウエハー65nmプロセス製造ラインを用いてSOTBを用いたチップの試作などを行ってきた。既にルネサスでは、同開発プロジェクトを通じ、0.4Vという低電圧でのトランジスタ駆動を実証(関連記事:動作電圧0.4V以下を実現する技術を開発、スマホの消費電力も1/10になる!?)。「消費電力を抑えられる0.4V駆動時で約10MHz動作ができる他、1.2Vで駆動させれば約300MHzの高速動作が行える」(ルネサス)とする。
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