クルマよりも規模の大きい“ルネサスの屋台骨・汎用事業”の戦略:ルネサス 執行役員常務 横田善和氏(3/4 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの売上高の約6割は、産業機器/家電/OA機器などの半導体を展開する汎用事業が担う。車載向け半導体事業を上回るビジネス規模を持つ汎用事業を統括する執行役員常務 横田善和氏に事業戦略などについてインタビューした。
顧客からのフィードバックで磨き
EETJ アプリケーション軸でのキット、ソリューション開発に着手されて、1年が経過しました。
横田氏 経験を重ね、深く理解しているモーター制御ノウハウなど良いものをいろいろ持っており、ソリューションを生み出すための下地は整っている。最初は手探りではじめ、ソリューションとしての完成度も低かったかもしれない。ただ、そうしたソリューションを提案し、顧客からの評価をフィードバックすることで、よりよいものに進化させる流れができつつある。2014年9月に東京で、2015年1月に大阪で開催したプライベートイベント「Renesas DevCon Japan」も、ソリューションを展示し、直接、顧客の反応を得て、次のソリューション開発にフィードバックさせようとの狙いもあって実施した。今回、大阪で紹介したソリューションには、2014年9月の開催で得た要望を反映させたものも多かった。
EETJ グループ外の企業との連携したソリューション開発はいかがですか。
横田氏 マイコンに関連した700社のパートナーとの活動の中で、産業/家電、OA/ICTに共通するIoT(モノのインターネット)に関する分科会を展開してきた。その成果として、ウェアラブル機器でライフログを取得するソリューションや、環境積み荷センシングソリューション、店舗などでの動線監視ソリューションの3つを構築した。いずれのソリューションもプロトタイプながら、複数の企業のと協業によりわずか3カ月で構築できた。ルネサス単体では難しい価値をパートナーと共に短期間で生み出せたことは1つの成果であり、今後も継続する。
また2015年3月には、R-INエンジン*)を搭載するデバイスを核にしたソリューションの構築を協力企業と共に目指すR-INコンソーシアムを発足させる予定だ。
*)R-INエンジン:ARM Cortex-M3プロセッサコアと、ハードウェア化したリアルタイムOS(HW-RTOS)と、イーサネットアクセラレータを一体化したルネサス独自の回路ブロックの名称。産業イーサネット通信用LSI「R-IN32M3シリーズ」や産業用マイクロプロセッサ「RZ/T1グループ」などの製品に搭載している。
クルマより欧米でのビジネス展開進む
EETJ 海外での事業展開の状況はいかがですか。
横田氏 先ほども紹介したように、産業機器用マイコンで世界シェア26%、産業機器用SoCで世界シェア30%などトップクラスのシェアを持っている。これは、欧米で幅広く利用されている結果だ。日系顧客への納入率の高い車載事業よりも、欧米をはじめとした海外への事業展開が進んでいる。どちらかといえば、カスタムLSI/ASIC中心のビジネスが多いため、表に出ることは少ないが、旧ルネサス テクノロジ、旧NECエレクトロニクス時代からの20年来の付き合いがある顧客が多い。
余談ではあるが、2014年11月にドイツで行われた展示会「electronica 2014」で出展した際も、地元顧客から昨今のルネサスの業績回復を喜んでもらった。
産業機器分野、特にインダストリー4.0やIoTに関する部分は、欧州が引っ張っている領域。長い付き合いがある地元の大手企業と連携して事業に取り入れていく他、欧州で得るノウハウなどを日本国内の産業分野にも展開していく予定だ。
EETJ アジアについてはいかがですか。
横田氏 欧米、国内と比べて弱い部分であり、今後強化していく。注力分野である白モノ家電に関しては、アジア、とりわけ中国が世界を引っ張るようになりつつあり、しっかり強化していく。
EETJ アジアの家電市場は価格競争が激しいですが。
横田氏 価格競争をしないわけではないが、(競争の激しい)レッドオーシャンに飛び込むつもりはない。強みであるモーター制御に加え、IoT/M2M対応やタッチセンサーなどのHMIの搭載が白モノ家電で進めば、ルネサスにとってビジネスメリットが大きくなる領域であり、(アジア向けビジネスを)強化していく。
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