クルマよりも規模の大きい“ルネサスの屋台骨・汎用事業”の戦略:ルネサス 執行役員常務 横田善和氏(4/4 ページ)
ルネサス エレクトロニクスの売上高の約6割は、産業機器/家電/OA機器などの半導体を展開する汎用事業が担う。車載向け半導体事業を上回るビジネス規模を持つ汎用事業を統括する執行役員常務 横田善和氏に事業戦略などについてインタビューした。
投資先は“つなぐ”“操る”“省く”“守る”
EETJ “守り”から“攻め”へと転じる上で、研究開発投資なども活発化していくと思いますが、投資先はどのような技術になりますか。
横田氏 ルネサスが豊富な資産を持つ技術を磨くような投資から実施していく。具体的には、“つなぐ”“操る”“省く”“守る”の4つの技術領域が投資先になる。
EETJ 現状、社内で足りていない部分を補う意味で、投資が迫られている技術領域はありますか。
横田氏 強いて上げるなら、1つはソリューション構築に不可欠なソフトウェア開発リソース。
もう1つは、“つなぐ”の部分でのRF技術だ。産業用イーサネットを従来の10倍のリアルタイム性でつなぐことのできるR-INエンジンや、USB関連デバイスなどが充実する有線通信に比べ、無線通信は開発中の世界最小電力のBluetooth SMART用ICなどもあるが、プラスαできる領域がある。
CPUコアにこだわらない
EETJ 車載向けマイコンでは、40nmプロセス品を投入され、28nmプロセス品の開発が始まっていますが、汎用マイコンの開発戦略はいかがですか。
横田氏 フラッシュメモリ内蔵が不可欠な車載マイコンと、必ずしもそうでない汎用マイコンでは、開発方針が異なる。大容量のフラッシュと高い性能を求める車載マイコンがフラッシュ混載対応の微細プロセス開発を引っ張っていくだろう。
一方で、産業機器など汎用向けでは、マイコン(MCU)というよりもマイクロプロセッサ(MPU)ではあるが28nmプロセスを採用したRZファミリや、MCUとしても240MHzの高速動作を実現したRX700シリーズを投入している。
また、リーク電流を下げて、動作速度を向上できるSOTB(Silicon On Thin Buried Oxide:超低電力トランジスタプロセス)もほぼ完成し、今後1年以内にマイコンに適用して製品化していく。長時間、長期間の電池駆動が要求されるウェアラブル機器やセンサー端末に最適なプロセス技術として新しい価値を提供できる技術として期待している。
今後も、産業機器向けなど汎用マイコンで求められるニーズに対応するハイエンドからローエンドまでの製品がそろえていく。
EETJ ローエンドからハイエンドのRX700までの製品は、ルネサス独自コアを搭載する中で、超ハイエンドと呼べるRZファミリではARMコアを採用されました。ARMコア搭載マイコンを主力とする競合他社と、製品間の互換性に劣ることになりませんか。
横田氏 現状、そうした問題はないと考えるが、将来的にシームレスに移行しやすい製品構成が必要になるのであれば、ARMコアを搭載したマイコンの開発も検討する。あくまでアプリケーション、ソリューションに適したCPUコアを選択することが基本。CPUコアはいわばツール、手段のようなもので、必ずしもCPUコアにこだわらない。
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