連載
ルネサスの最新半導体ソリューション(6)――建造物の内部劣化を知る技術とカメラの大きな揺れを補正する技術:福田昭のデバイス通信(8)(2/2 ページ)
今回は、都市で応用できる技術を紹介する。建物の内部劣化をインピーダンスから検知する技術や、±6°という大きなブレを調整するカメラ用の手ブレ補正技術だ。手ブレ補正は、民生機器向けではなく、インフラ向けというのがルネサスらしい。
±6°の大きなブレをキャンセルするカメラ用手ブレ補正技術
非常に興味深かったのは、カメラ向けの手ブレ補正ソリューションである。±6°という大きな手ブレがあっても、リアルタイムで画像を補正し、安定したブレのない画像を得られる。一般のデジタルカメラが搭載する手ブレ補正がキャンセルする揺れは±1.5°くらいなので、今回のソリューションは非常に大きな揺れでも補正が可能であることが分かる。
展示ブースでは三脚の上に円筒形のデジタルカメラを2つ装着し、来場者が三脚のハンドルを操作することで手ブレを起こして補正の効果が目で確認できるようになっていた。2つあるデジタルカメラの1つは補正なし、もう1つは補正あり、という設定である。展示ブースの液晶ディスプレイには、2つのデジタルカメラの出力が表示される。補正は光学式である。カメラを揺らすと、カメラのレンズが補正によってウネウネと動く様子が見て取れた。
想定している応用は、防犯カメラや防災カメラなどのインフラ用途である。例えば自然災害(地震や強風など)によってカメラが揺らされても、鮮明な画像を撮影できる。手ブレ補正の応用となると、家庭用デジタルカメラやスマートフォンが内蔵するカメラといった民生用途を想像しがちだ。民生用途ではなく、インフラ用途を想定しているところが、ルネサスらしい。
手ブレ補正の効果をテストした結果を展示ブースの液晶ディスプレイに表示していた。走行中のバスで前方を動画撮影するカメラの映像である(残念なことに、この写真ではシャッタースピードのために補正の効果がよく分からない。筆者が見た動画では補正の有無による画像の違いが明確に出ていた)
(次回に続く)
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