サイプレス、5年ぶりのタイミング製品を投入:ビジネスニュース 企業動向
Cypress Semiconductor(以下、サイプレス)は2015年4〜6月に、プログラマブルクロックジェネレータ「CY27410」を量産出荷すると発表した。同社がクロック関連製品を投入するのは、約5年ぶり。
強みの“プログラマブル技術”で再参入
Cypress Semiconductor(以下、サイプレス)は2015年4〜6月に、プログラマブルクロックジェネレータ「CY27410」を量産出荷すると発表した。4つのPLL(Phase-Locked Loop)を搭載し、最大12個の出力周波数をソフトウェアで選択、生成できる特徴を持ち、「今後も、プログラマブルという特徴を備えた製品を投入し、タイミング関連ビジネスを継続強化していく」(日本法人社長 吉澤仁氏)とする。
サイプレスがタイミング製品を投入するのは、実に5年ぶりだ。20年以上前から、タイミング関連製品を展開し、「現時点でも、クロックジェネレータでは、トップクラスのシェアを有している」(吉澤氏)と明言するにもかかわらず、過去5年に渡り、新製品を投入してこなかった。
「市場では、サイプレスがタイミング製品から撤退するとうわさされてきたと思うが、実際、社内でもタイミング製品の事業を継続するかどうか、長く議論を重ねてきた」と認める。「タイミング製品は一時、価格がひときわ低下し採算性が悪化した。ただし、昨今は機器に搭載されるインタフェースが多様化し、多くのクロックを、自在に設定できる製品が求められるようになり、サイプレスの強みであるプログラマブル技術が生きる市場と判断して、再び、継続的な強化を行うことにした」と再参入に至った経緯を語る。
第1弾は高集積型プログラマブルクロックジェネレータ
再参入第1弾製品となったプログラマブルクロックジェネレータ CY27410は、現状の市場が求めるジッタ性能など基本性能を確保しながら、プログラマブルな多出力、多機能を実現する高集積型クロックジェネレータとして開発した。
「競合製品と比べて、最も多出力に対応する」という最大12個の出力は、うち8出力がシングルエンド出力と差動出力を選択可能。差動出力での最大出力周波数は700MHz、シングルエンド出力でも同250MHzを達成している。
その上で、RMS位相ジッタは0.7ps、1PLL当たり消費電流は26.5mAで、「競合製品と同等クラスを確保した」とする。「正直、ジッタや消費電流は他社並みではあるが、同じ性能ながら、多機能、多出力対応という高集積クロックジェネレータという面で特徴的な製品」とし、VCXO(電圧制御水晶発振器)と同じように使用できるVCFS機能やPLLのカスケード接続機能などの独自機能を多く盛り込んだ。
こうした高い集積性を生かして、多くのインタフェースを搭載する複合プリンタや省サイズ要求の強いフェムトセル向けに拡販する他、「競合品にはない」という高温環境での動作を保証した車載グレード品を用意し、車載インフォテインメント向けにも展開する方針。
年内にもう1製品投入へ
サイプレスでは「2015年内に、CY27410に続く、クロックジェネレータの新製品を投入する予定。第2弾は、ジッタなどの性能をより高めたプログラマブル製品を投入する」とし、継続的にタイミング関連製品の強化を図っていく方針だ。
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