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京都議定書を「トイレ」と“あれ”で説明しよう世界を「数字」で回してみよう(13) 環境問題(3/9 ページ)

今回は、いよいよ環境問題シリーズの最難関である「京都議定書」を、比喩を使って解説したいと思います。おそらく、こんな比喩を用いて京都議定書を説明した例は、かつてなかったのではないでしょうか。なお、お食事中の方は、本稿を読むのをお控えください。

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「22.6%」は、いいのか悪いのか

 さて、話を戻します。

 京都議定書の第一約束期間(2008〜2012年)において、全体の削減量は目標の5%を大幅に上回る22.6%で達成されたと報道されています。私には、これは大成果のように思えます。京都でもう1回、祇園祭クラスのお祭りをしてもいいんじゃないかと思うのですが、思いの外、このニュースの扱いが小さいようです。

 そもそも、この22.6%が、どの数をどの数で割った数なのか、どこにも何の説明もないから、どう評価してよいのか全然分かりません。調べてみても、そのような説明はどこにも見つけられませんでした。仕方がないので、京都議定書の条文にまで立ち戻って数字を回してみました。

 まず、京都議定書第3条には、「附属書Iに掲げる締約国は、附属書Iに掲げる締約国により排出される附属書Aに掲げる温室効果ガスの全体の量を2008年から2012までの約束期間中に1990年の水準より少なくとも五パーセント削減することを目的として」と記載されています。

 ところが、京都議定書のどこにも附属書Iが見当らないのです。もうこの段階で、混乱確定です。

 調べてみて分かったのですが、附属書Iとは、京都議定書の附属書Bではなく、気候変動枠組条約の締約国の中の先進国(下の図の赤枠の国々)のことだったのです。

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 京都議定書(第一約束期間(2008〜2012年))の成果、22.6%とは、

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ということです。

 この22.6%を評価するのは難しいです。というか、私には、この式の意味すら分かっていません(誰が教えてください)。

 京都議定書からバックレたカナダとアメリカを分母に加えなければならないことも、現時点でCO2排出量で世界第1位の中国(26.9%)、第3位のインド(5.7%)が加わっていないことも、訳が分かりません(EDMC/エネルギー・経済統計要覧2014年版)。

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 「訳が分からない」といえば、その中国とインドが、ちゃっかり京都議定書の締結国として加わっているのも不可解です。しかも削減義務もないのにです。「一体、あんたたち(インド、中国、韓国、トルコなど)、何しに京都に来たの?」と尋ねたくなりました(しかし、第2約束期間において、日本も同じ立場になっていますが)。そして、この理由は、後ほど分かります。

 いずれにしても、下のグラフで明らかなように、京都議定書で削減量“22.6%”の成果を得ながら、世界の年間CO2の排出量は、現在も絶賛増加中です。

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 しかし、今回の京都議定書の成果をいたずらに低く評価すべきではありません。

 京都議定書の最大のチャレンジは、全世界を巻き込んだ環境問題の市場化の実証実験であったからです。

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