京都議定書を「トイレ」と“あれ”で説明しよう:世界を「数字」で回してみよう(13) 環境問題(8/9 ページ)
今回は、いよいよ環境問題シリーズの最難関である「京都議定書」を、比喩を使って解説したいと思います。おそらく、こんな比喩を用いて京都議定書を説明した例は、かつてなかったのではないでしょうか。なお、お食事中の方は、本稿を読むのをお控えください。
日本はいくら払っているのか
では最後に、日本がいくら払って、どの国のトイレでウンコをしてきたのかを調べてみました。
わが国は、2008年から2012年までの5年間に、
1500億円を払って国外に1億トン分のウンコ(CO2)をしてきました*2)。
*2)合計1562億円、総契約料9753万トンでした(参考資料:京都メカニズムクレジット取得事業の概要について[環境省])。
ざっくり1トン1600円くらいですね。当時は、今の相場より割高だったようです。「1トンのCO2をイメージしてみる」も併せてご覧ください。
わが国が、わが国のウンコでお世話になった国とその比率は、以下の円グラフの通りです。
さて、実はこの図に、先ほどの疑問、「一体、お前たち(インド、中国、韓国、トルコなど)、何しに京都に来ていやがるのか」の答えが記載されているのです。
つまり、数値目標がなく削減義務がない国でも、京都議定書に参加さえしていれば、クリーン開発メカニズム(CDM)には参加できるというわけです。
- 数値目標を持っている削減義務のある国(日本など)は、とにかくウンコがしたい。
- 数値目標を持っていない削減義務のない国(中国など)は、とにかくトイレが欲しい。
京都議定書は、このウンコとトイレをマッチングさせたのです。
―― お見事!
私は思わず、うなってしまいました。
つまり、京都議定書は、方法の是非はどうあれ、とにかくなりふり構わず世界中の国を環境対策に巻き込み、そして、その成果を世界に示すことに成功したのです。
ところが、日本は、京都議定書の第二約束期間(2013年〜2020年)に、削減義務国としては参加しないことを表明しました。世界の27%ものウンコ(CO2)を排出している中国が、相変わらず「削減義務なし」となっているためです。
環境対策において世界有数の優等生であり、長年ウンコを我慢し続けてきた日本は、『これ以上やってられっかー!』とグレてしまったのです。無理もありません。身びいきなしで同情できます。
それでも、2020年に開始が予定されている、ポスト京都議定書までには、再び立ち直っていてほしいものです。
以上、今回は、京都議定書を題材に、現在の国際的な環境問題の取り組みをご紹介しました。
■各国の温暖化ガスの排出量は、実測されているのではなく、温暖化ガスになる前の燃料などを、何年もの時間をかけて、一つ一つチマチマと集計して算出していることをお知らせしました
■京都議定書で採用している温暖化ガス削減の技術「京都メカニズム」である、排出量取引(ET)、共同実施(JI)、クリーン開発メカニズム(CDM)の仕組みを、温暖化ガスを「ウンコ」、排出枠を「トイレ」として説明しました
■京都議定書が、「なにふり構わず世界中の国を環境対策に巻き込み、そして、見事に成果を上げた」という私の所感をご紹介しました
次回、もう一回ほど環境問題で書けそうなネタがあるのですが、今、私は「ウンコ」と「トイレ」の記載(数えたら、全部で100個程あった)で、結構ゲッソリしています。なので、少し考えさせてください。
では、また来月お会いしましょう。
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