50A出力のデジタル電源モジュール、4個並列で200A出力も可能:電源設計 デジタル制御(2/2 ページ)
インターシルは、1パッケージで出力電流が最大50Aのデジタル電源モジュール「ISL8272M」を発表した。最新のFPGAやASIC、プロセッサなどの電源用途に向ける。
「ChargeMode」制御のアーキテクチャ
同社が第4世代と呼ぶデジタル電源コントロールICは、「ChargeMode」制御のアーキテクチャを採用している。一般的に用いられている「電圧モード」制御の電源モジュールは、出力電流の精度は高いものの、急激な負荷変動に対しては、十分な応答特性が得られないという課題があった。
これに対して、ChargeMode制御方式のISL8272Mは、負荷が一定している場合は電圧モードで動作する。しかし、負荷側のFPGAやDSPで急激な電圧降下などの変動を検知すると、「シングルクロックサイクル」でパルス幅を調整する。これにより、高速な過渡応答を可能とした。再び負荷が一定になると精度の高い電圧モードに戻るという仕組みだ。さらに、第4世代のデジタル電源コントロールICは、スイッチング素子のデッドタイム(オンとオフの切り替え時間)を最適化でき、30nsなど最も高い効率が得られる時間に設定することができるという。
ISL8272Mのデバイスパラメータとテレメトリ機能の設定などは、同社が提供するGUIソフトウェア「PowerNavigator」で容易に行うことができる。PowerNavigatorを用いると、プログラムを記述することなく、パラメータを設定するだけで、デジタル電源回路の特性と機能を変更することが可能となる。
90℃でもフルに出力
ISL8272Mは、入力電圧4.5〜14Vで、出力電圧は0.6〜5vである。出力電圧精度は1%となっている。スイッチング周波数は296kHz〜1.06MHzに対応する。変換効率は最大96%と高い。パッケージは外形寸法が18×23×7.5mmの小型HDAで供給する。このパッケージは、端子のある背面にメタルを貼り付けることで放熱特性を高めている。「90℃の温度環境でもフルに50Aを出力することができる」(同社)という。ISL8272Mの価格は、1000個購入時の単価が50.75米ドルである。
なお、電源システムの評価や開発期間を短縮することができる評価ボードも2種類を用意した。50A出力デジタルモジュール評価ボード「ISL8272MEVAL1Z」が83米ドル、150A出力の評価ボード「ISL8272MEVAL2Z」が150米ドルである。
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