MicrosemiがVitesse買収――懸念される「MIPS対ARM」の構図:ビジネスニュース M&A(2/2 ページ)
Microsemiが、Vitesse Semiconductorを買収する。Vitesseの産業用イーサネット技術を生かして、競合他社では入っていけないニッチな分野を狙うと見られている。ただし、プロセッサのアーキテクチャは、MicrosemiがARMを、VitesseがMIPSを採用していて、両社では近いうちに“MIPS対ARM”の構図になるのではないかと予想される。
MIPS対ARM
ただし、技術的に難しい面もある。
Hackenberg氏は、「Vitesseが供給する高性能プロセッサは、Imagination TechnologiesのMIPSコアをベースとしている。一方、Microsemiの、より小型のプロセッサはCortexを搭載している。これらのアーキテクチャは、両社が設計するIC向けに最適化されている」と説明する。
「MIPS CPUは、コード密度を高め、帯域幅に対するデータスループットを改善するために高度に最適化されている。これに対して、ARM MCUコアは、低消費電力デバイスや接続制御機能向けに最適化されている」(Hackenberg氏)。
主要なプロセッサメーカーのほとんどは、コストを抑えるために、採用するアーキテクチャの数を削減している。Microsemiが2つの異なるコアをベースとした製品ラインをどのように扱っていくかは不明だ。
Hackenberg氏は、「多様な製品ラインを維持しながら着実に成功しているICベンダーがないわけではないが、MicrosemiとVitesseの専門知識を統合した体制に迅速に対応することが、両社にとって重要な課題となるだろう」と述べている。
同氏は、Microsemiに関しては、「同社には、非常に特殊なニーズに対応できるフレキシビリティと信頼性がある。これを生かして、再構築可能なマイコンやメモリソリューション、高い信頼性が求められるアプリケーション向けの特定用途ICを開発している」と評している。
Vitesseについては、「半導体サプライヤであると同時に、アプリケーションやサービス、ネットワーク設計のターンキーサポートを含む幅広いポートフォリオをそろえる。高速ネットワークアプリケーションやネットワークセキュリティ市場を対象に、幅広いIPポートフォリオとインタフェースから高性能ネットワークプロセッシングユニットまでのネットワークIC製品を提供している」と説明している。
成熟した2社の統合
今回の買収では、安定した地位を築いている2社が統合されることになる。Microsemiの前身は、1960年に設立されたMicrosemiconductorで、1983年3月にMicrosemiに改名された。Vitesseは1984年に創業した。
MicrosemiのCEOであるPeterson氏は、2014年12月を末日とする2015年第1四半期の決算発表で、「当社の収益は、通信事業が36%、防衛/セキュリティエンドマーケットが28%、産業市場が23%を占めている」と述べていた。
Vitesseの買収によって、Microsemiは通信技術を強化する狙いだ。
両社の取引は、2015年第2四半期に完了する見通しである。Microsemiは今回の買収の前にも、2013年にタイミングICベンダーのSymmetricomを2億3000万米ドルで買収している。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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