連載
ARMから見た7nm CMOS時代のCPU設計(12)〜トランジスタ構造の展望:福田昭のデバイス通信(23)(2/2 ページ)
今回は、トランジスタ構造の展望を、2つの軸に沿って見ていこう。1つ目はプレーナFETからFinFETへの移行、2つ目は14nm世代から5nm世代にかけてのトランジスタ仕様である。FinFETの登場は、プレーナFETにはなかった新たな課題をもたらしている。
チャンネルの材料が非シリコンに変わる
FinFETの延命手段として考えられているのが、チャンネル材料(フィンの材料)の変更である。シリコンは非常に優れた材料なのだが、半導体材料としてはキャリアの移動度がやや低いという弱点を有する。キャリアの移動度はトランジスタの電流密度を左右する。移動度は高いことが望ましい。
シリコン(Si)よりも高い移動度を備えた半導体材料の候補は、ゲルマニウム(Ge)とインジウム・ガリウム・ヒ素(InGaAs)である。キャリアには電子と正孔があり、それぞれの移動度は同じ材料でも違う。一般的には電子の移動度が高く、正孔の移動度が低い。
電子の移動度で比べると、InGaAsがきわめて高く、Geが比較的高く、Siと続く。正孔の移動度ではGeが比較的高く、Siは低い。InGaAsはさらに低いとされる(室温の場合)。
そこで研究開発レベルでは、GeをnチャンネルFETとpチャンネルFETの両方に採用したトランジスタや、InGaAsをnチャンネルにしてGeをpチャンネルにする材料を使い分けたトランジスタなどが試作されている。
(次回に続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「経験で設計すると失敗する」、ルネサスが提示する16nm FinFET SRAMの課題
ルネサス エレクトロニクスは、16nm FinFETプロセスを用いてSRAMを試作したと発表した。プレーナ型MOSFETを使う場合に比べて低い動作電圧で高速読み出しに成功しているが、一方でFinFETと、微細化プロセスを用いたことによる課題も増えている。 - TSMC、2015年半ばに16nm FinFETの量産開始へ
TSMCは、16nmプロセス以降のロードマップを明らかにした。まずは2015年半ばに、16nm FinFET+を適用したチップの量産を開始する。2016年には、10nmチップの生産工場の建設にも着手する。 - TSMCが設備投資額を100億ドルに拡大、16nm FinFET量産準備で
TSMCは、16nm FinFETプロセスチップの実用化に向け、2015年の設備投資を100億米ドル以上に増額する予定だという。2016年には10nmプロセスの実用化も予定している。 - ムーアの法則、半数以上が「22nm以降では難しい」――半導体業界リーダー調査
オランダのKPMGが半導体業界のビジネスリーダーを対象に調査したところ、「ムーアの法則の有用性は存続する」と予想しているのは、回答者の1/4で、半数以上が「22nmプロセス以降では、ムーアの法則の存続は難しい」と考えていることが分かった。 - ムーアの法則、50年をたどる
1965年、IntelのGordon Moore(ゴードン・ムーア)氏が雑誌に掲載したトランジスタに関する予見は、「ムーアの法則」として半導体技術の発展の大きな原動力となった。ムーアの法則によってトランジスタがどれほど進化してきたのか。50年を振り返ってみる。