もうスマホでやけどしない!? 薄さ100μmの断熱シート:ビジネスニュース 企業動向(2/2 ページ)
パナソニックは薄くて高性能な断熱材「NASBIS(ナスビス)」を開発し、2015年6月から量産を開始した。スマートフォン(スマホ)やウェアラブル機器の熱対策部品として、熱源のピーク温度を低減するだけでなく、同社の高熱伝導のグラファイトシートと組み合わせて使用すれば、放熱の方向制御もできる。
新しい熱ソリューションの提供へ
NASBISは熱対策部品として、スマートフォンやウェアラブル機器への適用を想定している。近年では、電子機器の多機能化、高性能化、小型化・薄型化が進み、多くの熱による問題が発生してきた。例えば、表面にヒートスポットが発生して低温やけどのリスクが生じた。さらには、充電時間や動画連続撮影時間などのパフォーマンスの制限が生まれた。
それらの熱問題に対して、NASBISをICやカメラなどのデバイスと、筐体(きょうたい)の間に挟むことで、筐体表面のピーク温度の低減や性能の向上に貢献するという。さらに、同社の「PGSグラファイトシート」(Pyrolytic Graphite Sheet)と組み合わせることで、より高度な熱対策が行えるとする。
PGSグラファイトシートは銅の2〜4倍とダイヤモンドに次いで熱伝導が非常に優れ、柔軟性を持ち、曲面や角部の使用に適している特長を持つ。離れた所に熱を運んだり、熱源とヒートシンクに挟んで熱を広げたりといった使い方がある。つまり、NASBISでヒートシンクのピーク温度を低減した上で、PGSグラファイトシートを使い熱を拡散させ、効率良く放熱するといった熱対策が行えるようになる。
「NASBIS」と「PGSグラファイトシート」を複合したソリューションの価格は、「用途・形状・加工を含めての提供なので、お客様によって値段は変わり、決して安くはない。しかし、現在供給されている製品に合わせた価格設定にしていく」(パナソニック)とする。
今後はNASBISの形状を大きくすることで、産業機器や自動車、白モノ家電などの熱のもれに課題を持っている用途に向けても展開していく方針だ。
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