相次ぐM&A、“すり合わせ時代”の到来か:電子機器設計/組み込み開発メルマガ 編集後記
半導体企業のM&Aが相次いでいるのは、偶然のようには思えません。半導体業界が大きな変化点を迎えているこその再編に違いありません。このところのM&A案件から、個人的に業界に起こりつつある変化を読み解いてみました。
相次ぐM&A、“すり合わせ時代”の到来か
CypressとSpansion、MicrochipとMicrel、NXPとFreescale、AvagoとBroadcom、そしてIntelとAltera。
2015年になって実施、発表された半導体業界のM&A案件です。買収額1兆円を超える大型案件だけでもわずか半年足らずで3つ。こうしたM&Aが続いたのは、単なる偶然と考えるより、半導体業界は大きな変化点にあると考えた方が良さそうです。
これまで半導体業界のM&Aの主流は、大きな企業が同業の小さい企業や業績不振の企業を飲み込む構図でした。Micronとエルピーダ、Texas InstrumentsとNational Semiconductorなどが代表的な事例でしょう。
2015年に起こっているM&Aは、同業のライバル同士というよりも、“お隣さん同士”というような相互補完型案件が多くなっています。
半導体業界は、技術進化が激しく、より技術が複雑になったことで、“分業”が進んできました。まずは、製造と設計、販売を分業する水平分業化が起こりました。さらに、設計/販売の中でも、製品/用途分野ごとにすみ分けて分業、専門化する流れが顕著でした。
各専門メーカーが、専門の半導体を作り上げ、ユーザーがそれらを組み合わせて使用してきました。さらに昨今では、ユーザーに成り代わって、プロセッサやマイコンなどその機器で核となるデバイスを作る専門半導体メーカーが、他の専門半導体メーカーの周辺デバイスと組み合わせて、ユーザーに提供するようになりました。いわゆるモジュール、リファレンスキットの提供です。
技術が高度化すると同時に、半導体の応用用途も広がりました。新興国の台頭、自動車の電子化、IoT(モノのインターネット)化などにより、それまで半導体、エレクトロニクスと縁遠かったユーザーも半導体を使用するようになりました。ですから、すぐに作れる、すぐに動かせる“モジュール/リファレンスキット”の存在は、極めて重要なわけです。いくらデバイス単体の出来が良くても、モジュール/リファレンスに載らない限り、売れないという時代になっています。
ただ、このモジュール/リファレンスキットを全て自社のデバイスだけで提供しようという動きは、一部に限られました。なぜなら、あらゆる製品分野に手を伸ばしてしまうとそれぞれのデバイスの個別最適に対する投資が散漫になり、製品分野を絞って個別最適に集中投資する専門メーカーに後れを取ってしまうからです。実際、特定分野に集中してきたQualcommやBroadcomが台頭し、ルネサスなどデパート型メーカーは苦難の連続で、事業の“選択と集中”を迫られました。
しかし、昨今のM&Aはこの流れに反します。
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