スパコン並みの脳機能コンピュータ、2030年に野球ボールサイズで実現へ:先端技術(3/3 ページ)
野球ボールサイズのてまり型スパコンが2030年に登場するのか。電子回路LSIの限界を超えるための技術として、シリコンフォトニクス技術が注目されている。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「光エレクトロニクスシンポジウム」で、その可能性の一端を紹介した。
新ビジネス創出は企業
続いて、「国家プロジェクトにおける技術研究組合PETRAの挑戦」と題し、藤田氏が講演を行った。藤田氏は、米国や欧州を中心に国家プロジェクトとして各国/地域で取り組まれているシリコンフォトニクスを用いた光電子集積回路の研究について、その特長などを述べるとともに、日本における取組などを紹介した。
藤田氏は、まず各国の国家プロジェクト投資額や全研究費に占める政府負担比率などに触れ、EUや米国では政府負担額や負担比率が高いことを具体的に示した。しかも、「世界のシリコンフォトニクス国家プロジェクトではEUと米国が世界をけん引している」と述べた。
光電子集積サーバ
さらに、IBMやIntel、HP、Ericssonが開発に取り組んでいる光電子集積サーバのアーキテクチャなどを紹介した。IBMの光集積化技術は、ロジック層、メモリ層およびフォトニクスのネットワーク層からなる3層構造のデバイスで、25Gbps×4chトランシーバ製品が2016年に製品化される予定だという。
日本におけるシリコンフォトニクスへの取り組みについても触れた。関係者の基本姿勢として、半導体の限界を克服する技術であることを共有していること、システム側の要求をデバイス開発に反映していくこと、などを挙げた。さらに、プロジェクト終了を待たずに、タイムリーに事業化することで、産業界あるいは社会に貢献していく考えである。
「国家プロジェクトは革新的な事業基盤を提供するだけ」
藤田氏は、「国家プロジェクトは革新的な事業基盤を提供するだけ。これらの研究成果を活用して、新しいビジネスを生み出すのは企業の役割である」と述べ、講演を締めくくった。
この他、招待講演として、富士通研究所の会長を務める富田達夫氏、インテル日本法人の副社長を務める阿部剛士氏、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の衛星システム開発統括付を務める山川史郎氏、豊田中央研究所の主席研究員を務める各務学氏らが、応用機器/システム分野の立場から、光エレクトロニクスへの期待などを述べた。
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