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悪いけど、IPはEDAじゃないよArterisのCEOが語る(2/2 ページ)

半導体IPビジネスとEDAビジネスを比べている会話を耳にした。彼らは「IPはEDA」だという結論に達した。しかし、いくつかの関連性はあるものの、これらはまったく異なる代物だ。それぞれの分野で10年間を費やした私は、このことを学んだ。

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IPとEDAの違い

 基本的な違いは、EDAツールはチップ設計を支援するものであり、IPはチップ内にあるものだということです。事実、今日のSoCの大半は社内外から調達されたIPで組み立てられています。IPがチップなのです。

 ここが最大の違いです。その違いは、ソフトウェア開発ツール市場と、デバイス上で動作するアプリの市場との違いになぞらえることができます。つまり、関連性はあるものの、まったく異なる代物だということです。他にも次のような違いがあります。

製品の選定:IP企業は製品を作る必要があるだけでなく、それをSoCに合わせて設計しなくてはなりません。次に、そのSoCをシステムに合わせて設計する必要があり、さらにそのシステムは量産できるものでなくてはなりません。他方、EDA製品がシリコン実証済みである必要はないため、EDAツールを作ったら3〜4年使うことができます。

ツールの役割:今、主要EDA企業がIPを提供し、主要IPベンダーがツールを提供しています。だからといってそれらがすべて同じなわけではありません。ArterisはインターコネクトIPと同梱でツールを出荷していますが、これは当社のIPでのみ機能するものです。世界でもっとも成功しているIPプロバイダのARMでさえ、自社IPの価値を高めることだけを目的としたソフトウェアツールを提供しています。

技術的目標:EDAツールは、QoR(Quality of Results)も1つの大事な目標としていますが、主に生産性の向上を目的として設計されます。一方、IPは一般にQoRの実現を目的として設計されます。

製品リスク―バグ:EDAツール内にバグがあっても、それがチッププロジェクトの致命傷となることはめったにありません。IP内にバグがあると、チップ全体が機能しなくなる恐れがあります。したがって、EDAツールを選ぶときよりもIPを選ぶときのほうがリスクを嫌う傾向が強いといえます。

製品の統合とエコシステム:IP内にはハードウェア実装から高レベルのソフトウェアアプリケーションにいたる数々のスタックがあります。半導体IPは、業界で常に進化し続けているハードウェアIPとソフトウェアのエコシステムに統合できるよう設計しなくてはなりません。一方、EDAツールは、高レベルから低レベルの設計抽象化ツールを結びつけることを目的とした、比較的スタティックなフローに統合されます。

ビジネス:販売サイクル、意思決定者、予算管理プロセス、サポート要件が異なります。IPとEDAを支えているエコシステムもかなり違います。CPU、GPU、インターコネクトといった主なIP製品の場合はロイヤリティが支払われます。EDAはプロジェクトベースまたはサブスクリプションベースでライセンス供与されます。したがって、EDAの販売担当者はIPの販売担当者とは違うやり方で顧客にアプローチしなくてはなりません。どちらの販売にも同じくらい長けている人はめったにいないでしょう。製品開発方法、製品ライフサイクル、検証にも大きな違いがあります。さらにライセンス条件も大きく異なり、ライセンス料とロイヤリティほどに違います。

IPはEDAではない

 EDAビジネスとIPビジネスの歴史はからみあってはいるものの、この2つは同じではありません。IPがチップに実装されるという事実ゆえに異なるビジネスモデル、パーソナルスキル、技術、企業文化が必要とされます。EDAの歴史から得た教訓をむやみにIPビジネスで生かそうとする人たちは、成功を収めるのが非常に難しいでしょう。

筆者プロフィル

K. Charles Janac氏

 NoCテクノロジという概念を世界に先駆けて提唱したArterisの会長、社長兼CEO。20年に及ぶキャリアはEDA、半導体資本設備、ナノテクノロジ、産業用ポリマー、ベンキャーキャピタルなど多岐の分野にわたる。 


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