多層記録層の中から特定層の磁化を反転、HDの記録密度向上へ:メモリ 多層磁気記録
東芝は、多層化されたハードディスクの記録層の中から、選択した層の磁性体について磁化の向きを反転させることができる技術を開発し、その実証実験に成功した。記録層の3次元化により、磁気記録装置の高密度・大容量化を可能とする。
東芝は2015年7月、多層化されたハードディスクの記録層の中から、選択した層の磁性体について磁化の向きを反転させることができる技術を開発し、その実証実験に成功したと発表した。記録層を3次元構造としたハードディスクや磁気メモリ、磁気テープなどに応用することで、磁気記録装置の高密度・大容量化を可能とする。
新たに開発して、その有効性を実証したのは、マイクロ波磁界を用いることで、多層化された記録層の中から、特定層を選択して磁化の向きを反転させる技術である。磁気記録ではこれまで、記録ビットの微細化によって単位面積当たりの記憶容量を高めてきたが、既に記録密度の向上は技術的な限界を迎えつつあり、記録層の多層化がその課題を解決する手法の1つとして注目されている。
具体的に今回は、強磁性共鳴周波数が異なる磁性体層を積層した。そこに強磁性共鳴周波数に応じた波長のマイクロ波磁界を印加すると、特定の磁性体層のみに磁化振動を励起することができる。マイクロ波アシスト効果により、磁化振動が励起された層は、磁化反転に必要なエネルギーが低減されるため、選択した磁性体層の磁化反転が可能になるという。
今後は、局所的にマイクロ波磁界を印加できるスピントルク発振素子と、この素子を搭載するための磁気ヘッドの開発を行っていく。さらに、多層記録に最適化した記録媒体の開発を進め、2025年ごろを目標に3次元磁気記録装置の実用化を目指す計画である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- デバイス内の熱輸送現象の解析を可能に、理研が新理論を構築
理化学研究所は、デバイス内の熱流や温度差によって生じる熱輸送現象の解析を可能とする理論体系を構築した。熱輸送現象による電流やスピン流などを高い確度で予測できることを示した。 - 磁気メモリの新材料が登場か――ビスマスフェライトで新方向の電気分極を発見
東京大学物性研究所の徳永将史准教授らの研究グループは、産業技術総合研究所(産総研)などの協力を得て、将来の磁気メモリ材料開発につながる電気分極成分を発見した。この成分は室温で不揮発性メモリ効果を示すことも観測した。 - スピントロニクス技術が可能にする新型メモリとHDD高記録密度化――TDK
TDKは、「CEATEC JAPAN 2014(CEATEC 2014)」において、ウェアラブル機器向けのワイヤレス給電システムやスピントランスファートルク(STT)型MRAMなどを参考展示した。 - 次世代メモリ市場、2020年には70億米ドル規模に
ReRAMやMRAMといった不揮発RAM市場は、今後急成長を遂げ、2020年には70億米ドル規模に拡大すると見られている。NAND型フラッシュメモリやDRAMに取って代わるには、微細化とビット当たりの価格が鍵になりそうだ。