次世代メモリ市場、2020年には70億米ドル規模に:ビジネスニュース 業界動向
ReRAMやMRAMといった不揮発RAM市場は、今後急成長を遂げ、2020年には70億米ドル規模に拡大すると見られている。NAND型フラッシュメモリやDRAMに取って代わるには、微細化とビット当たりの価格が鍵になりそうだ。
次世代メモリ(不揮発RAM)の世界市場は、2014年は6500万米ドルだったが、年間成長率118%と脅威の成長を遂げ、2020年には70億米ドル規模に拡大すると予想される。次世代メモリには、ReRAM(抵抗変化型メモリ)、MRAM(磁気抵抗変化型メモリ)、STT-MRAM(スピン注入磁化反転メモリ)、PRAM(相変化メモリ)、FRAM(強誘電体メモリ)などがある。
ただし、これらの次世代メモリが2020年の全メモリ市場に占める割合は10%に満たないという。次世代メモリが現在のメモリ市場で主流となっているNAND型フラッシュメモリ/DRAMから置き換わるには、まだ時間がかかるとみられる。
メモリチップは、カメラや自動車など幅広い製品に搭載される主要部品である。スタンドアロンチップは半導体市場の最も大きなセグメントの1つであり、フランスの市場調査会社であるYole Développementが2015年1月に発表した報告書によると、2014年の総売上高は780億米ドルに達したという。メモリの需要は今後数年間で急増すると予想される。その主な要因は、コネクテッドデバイスの利用の増加に伴うインターネット通信の激増にある。
NANDフラッシュとDRAMは市場での地位を確立している。だが、微細化に関しては多くの課題を抱えている。次世代メモリは、10年以上にもわたってNANDフラッシュとDRAMの置き換えを狙ってきた。過去2年間の動向を見ると、ReRAMとSTT-MRAMが主導権を握る一方で、PRAMはこの競争から脱落したようだ。
MRAM/STT-MRAMやReRAMは記憶密度が限られているため、これまでのところ需要はニッチ産業やウェアラブル市場に限定されている。Everspin TechnologiesやCrocus Technologies、Avalanche Technologiesなどのメモリベンダーは、MRAM/STT-MRAMの高密度化に苦戦してきた。Micron TechnologyのPRAMは、エントリレベルの携帯電話機市場の崩壊によって売り上げが大きく減少している。
微細化と価格低下が鍵に
一方で、明るい兆しもある。STT-MRAMの発展を目指すいくつかのアライアンスは、エコシステムの構築を支援している。パナソニックは2013年7月に、ReRAMを搭載したマイコンの量産を発表。さらに、Micronは、2015年と2018年に2種類の新しいメモリ製品を発表する計画を明らかにしている。
現在の主流であるNANDフラッシュとDRAMからシェアを奪う鍵となるのは、微細化とビット当たりの価格だ。不揮発RAMは記録密度に制約があることから、1Gビット当たりの価格は現時点で数百米ドルに上昇している。NANDフラッシュとDRAMの1Gビット当たりの価格が1米ドル以下であることを考えると、価格の高さが次世代メモリの採用を阻む大きな要因になっているのは間違いない。
だが、今後5年間で、次世代メモリの微細化と記録密度の向上は大きく進み、新たな用途が開かれると予想される。
次世代メモリは2020年までに、エンタープライズストレージ市場で大きくシェアを伸ばす見通しだ。不揮発RAMはデータセンターのストレージ性能を大幅に改善すると期待されることから、データ通信量の増加に伴って需要が高まると予想されている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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