製品アーキテクチャの基礎(前編):勝ち抜くための組織づくりと製品アーキテクチャ(6)(3/5 ページ)
今回から、いよいよ製品アーキテクチャの基本に入る。ここでは、分かりやすいように、自動車産業におけるモノづくりを知ることから始めたい。その後、製品アーキテクチャの種類と概要を紹介する。そのうちの1つは、日本の電機メーカーが本来“得意だった”はずのものだ。
“開かれたモノづくり”
今一度、第4回の図3をご覧いただきたい。
今回の図1は同図の下半分を切り取ったものである。第4回 図3では、「モノづくり現場」から、「企業」「産業」「経済」へとつながっている。その説明としては、モノづくり現場の「設計情報」にこだわり、製品における設計のあり方と組立を考える戦略論・産業論であるが、内容の多くはメカ領域に偏っている……と述べた。
前述した自動車のプレスの話をここでしてもしかたがないが、読者諸氏にはもう少し辛抱しながら、先を読み進んでいただけると、自動車産業におけるモノづくりから学ぶことの多さが見えてくるはずだ。なぜなら、ご存じの通り、今のクルマはエレクトロニクスの塊だからである。膨大な数のセンサーやCPU。これらを制御する組込みソフト。大げさにいえば、ちょっとしたPCを何台も搭載しているようなものだからだ。
藤本隆宏氏が言いたいことは、「開かれたモノづくり」という考え方である。
これは製造業の生産現場だけがもはやモノづくりではないという意味だ。広義には非製造業まで含まれるが、開発現場においても、「設計から発想するモノづくり」を意味し、先の設計情報の創造・転写・発信と、顧客に至るまでの流れが重要で、この結果、顧客満足、企業・産業の発展、経済効果を得ること。これがモノづくり現場から、企業・産業・経済へとつながり、製品における設計のあり方と組立を考える戦略論・産業論と言われるゆえんだ。
つまり、設計情報うんぬんを議論したいわけではなく、設計のあり方そのものが戦略論であり、産業論に通じる。そのための設計情報が大事であると言っていると解釈できる。この設計情報と密接に関係するものが、製品アーキテクチャであることに気づけば、頭がぽかーん……から、なんとなく分かったような気はしないだろうか?
ところどころ抽象的で概念チックな内容が続いたが、この“設計情報”の話をしておかないと、これから述べる“製品アーキテクチャ”の概念がぼやけてしまう。前回までにお話してきた「意味的価値」「組織能力」との関連性も分かりにくくなる。
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